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したがって、今回の臓器搬送においても、

・消防航空隊が府警ヘリポートを活用することについての連携

・パトカー三台による救急車の誘導走行

・京大病院までの搬送経路に対する交通規制の徹底及び交差点での交通整理

・(社)日本臓器移植ネットワークや京大病院との各種情報連絡など、実にスムーズな連携活動を行うことができました。

ドキュメント

摘出された肝臓と移植摘出チームを伊丹空港で引き継いだ消防航空隊ヘリコプター「ひえい」は、午後八時一四分、日が暮れた南の空からサーチライトを輝かせながら府警ヘリポート上で待つ我々の視界に現れました。

そのローター音が徐々に大きくなり、サーチライトが眩しく感じられる頃、「ひえい」は府警ヘリポート上空で一度旋回し、近くのビルの屋上に陣取った多くの報道陣のカメラフラッシュを浴びながら午後八時一六分に機首を東に向け着陸しました。

府警ヘリポートの照明に浮かび上がったヘリコプターの姿は、崇高な意思に基き善意の命を搬送してきた現代の箱船のようであり、そこに立つ我々に生命への畏敬の念を与えるには十分すぎるほどの荘厳さを持っていました。

扉が開き、駆け寄る救急隊員ら。

ヘリコプターには、ここまで多くの人々の手に守られてきた青いクーラーボックスが医師や航空隊員の手に支えられていました。

救急隊員は医師から青い命の箱(クーラーボックス)を引継ぎ、足早に、そして慈しむようにエレベーターホールで待つ救急車のストレッチャーへと向かいました。

「最後までこの青い命の箱を守り通す。」

その場にいる者全ての意思を込め、その箱はストレッチャーに固定されました。

中に納められている臓器は生ある人間そのものではなくとも、我々には提供者の遺志に応え、その臓器を持つ人の生き抜かんとする決意に応える使命があります。

確実に病院まで搬送するためだけではなく、提供者への敬意から必然のごとくストレッチャーへの固定を行いました。

誰もが寡黙であり、必要な事以外は誰も口にはしませんでした。

救急車内に収容し、京都府警察本部を出発しました。

パトカー三台と救急車は隊列を組み予定の搬送経路を一路京大病院へと向かいました。

途中、全ての交差点に警察官が立ち、交通規制を行ったおかげで、信号は全て青となっていました。

救急車内では、ベルトで確実に固定さているにもかかわらず、二名の救急隊員が終始青い命の箱に手を添え、支え続けていました。

午後八時二六分、京大病院到着

玄関には病院関係者のほか、多数の報道陣が待ち構えていました。

多くのフラッシュやライト、そしてアナウンサーの実況中継の中、青い命の箱は救急隊員の手に守られながら病院内へと入りました。

 

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