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前例がないということであれば、自分たちが作るまでである。まず、テキストブックの構成をどうするか。そこで、これだけは必要であろうと思われる用語や会話表現を「火災編」、「救急編」、「火災予防編」、「基本用語編」に分けてピックアップしてみた。一冊で最低限の表現をすべて網羅しようと考えたのである。

ところが、話し言葉にするとたいしたボリュームにはならないものが、これを手話で表すとなると、写真やイラスト等の枚数がかなりのものとなることが分かり、更に採択すべき用語及び会話表現を絞り込み、簡潔にまとめる必要性が生じてきた。

 

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そこで、災害現場における聴力障害者とのコミュニケーションを第一に考え、その中でも一番頻度が多いのは救急活動であるとの結論から、「救急編」を主とした構成とすることで作業を進めることとした。

会話表現の絞り込みを行いながら、イラストの作成者や写真説明用のモデルとなってくれる手話通訳者の人選をどうしようかと苦慮しているうちに、またまた問題が発生した。イラストや写真だけでは、動作と動作の間のつながりが、私たち素人にはどうも分かり難い部分があるのである。どうせ作るなら分かりやすいものをということになり、このテキストブックの内容に合わせて、手話を実演しているところを撮影したビデオを作ろうということでスタッフの意見がまとまった。テキストブックとビデオテープの二本立てによる手話マニュアル集の作成という最終目標が見えてきた。

テキストブックの内容がほぼ決定した段階で、ビデオの制作に着手した。制作にあたっては、福岡県聴覚障害者協会の多大なる協力を得ることができ、シナリオの内容についても相互に連絡を取り合いながら進めて行った。

撮影に際しては、出演者のスケジュールや天候等に左右され、なかなかスムーズには行かないこともあったが、発案から一年二か月を要して、ようやく「消防職員および聴力障害者のための防災用語手話マニュアル集」の完成となった。

 

三 防災用語手話マニュアル集の内容等について

本マニュアル集のテキストブックは、総ページ数四〇ページで、以下の一二レッスンで構成しており、随所にイラストや写真による解説を施し、更にレッスン一〜七までの表現はビデオ映像付きである。また、巻末には単語索引を掲載し、学習の手助けとしている。

手話の指導については、福岡市聴力障害者福祉協会の手話通訳者、金子真美さんにお願いしている。

レッスン1] 〜 あいさつ表現(おはよう、こんにちは、こんばんは)

レッスン2] 〜 手話表現の基本的なポイント(手の形、位置方向、表情)

レッスン3] 〜 単語表現(名前、病院、救急車、消防車、火事等業務に関する単語)

レッスン4] 〜 例文表現I(患者に出会ったときの簡単なコミュニケーション、「病院と連絡がつきましたので、病院へ向かいます。」等)

レッスン5] 〜 例文表現II(患者への症状の問いかけ、「胸が苦しいですか?」等)

 

 

 

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