最近は過労死問題が社会問題となって、ようやく、裁判所の判決も過労とうつ病の因果関係を認めるようになってきました。また、労働基準監督署も労務災害として過労死を認めるようになり、その基準を緩和しました。画期的なのは、うつ病の治療を受けていなくても、そのような状態にあると推定できた時にも、それを判断の基準としたことにあります。職場のメンタルヘルスを考える時にこのことを念頭に置いて、職場は安全配慮義務を考えなければなりません。また、働く人自身も自分の健康保持のために、疲労と健康について日頃からストレスコントロールをしていかなければなりません。次に心身の健康保持増進のため、そのポイントを挙げてみます。
五 ストレスとのつきあい方十か条
第一条 身体の不調は休息のサイン
ストレスによって身体の不調が現れます。胃腸の調子が悪くなったり、汗をかいたり等の自律神経の変調がおきます。また、不眠に現れたり、気分障害(軽うつ状態)がおきていることがあります。自分の身体を大切にしましよう。
第二条 疲労に注意すること
仕事が忙しく疲労が続いている時には注意しましょう。疲労は仕事の能率の低下を招き、ミスを多発したり、事故の原因にもなります。また、イライラしたりして、人と思わぬトラブルを引き起こします。疲れている時の深酒が思わぬ事件を起こしてしまうことがあります。肉体疲労は充分な休養が必要です。頭脳疲労には少しの眠りと身体を適度に動かすとよいでしょう。
第三条 転勤前後に注意すること
サラリーマンに転勤はつきものです。転勤は送別会があったり、歓迎会があったり、意外と睡眠不足になっていることが多いようです。また、新しい仕事を覚えるのもエネルギーを使うものです。疲労することが多いことを念頭に置きましょう。
第四条 小休止のすすめ
平素の根気や気力がなくなったら、早めに休むことです。週のなかば(水曜日)に少しでも早く帰り、休息すると効果があります。心身のリラックス法を身につけて、いつでもどこでもリラックスしましょう。できればどんな所でもいいから、少しでも居眠りができるとよいでしょう。
第五条 休日の過ごし方の工夫
休日にごろ寝をしたくなりますが、ごろ寝よりも積極的に散歩や運動をして体を動かした方が疲労回復になります。一週間のスタートは休日から始まると考え、休日のウォーミングアップを心がけるとよいでしょう。
第六条 熱中できる趣味をもとう
仕事意外のことに熱中することで、仕事のストレスと距離をもつことができます。仕事以外の人間関係も楽しめるようになりたいですね。そのことで救われることがあります。
第七条 愚痴を言える人を大切に
感情表現はストレス解消になります。話すことで自分のストレスを自覚できるようになります。愚痴を言えるような人生のパートナーがいることは、その人の財産です。
第八条 自分に優しく
疲れたり、調子が悪くなると、余計に些細なことでも自分を責めてしまうことがあります。時には他人に責任を押しつけてしまう位の図太さも必要でしょう。
第九条 好奇心を失わないこと
好奇心をいつまでも失わない人はいつまでも若々しいです。自分の世界を広げていく原動力は好奇心です。
第十条 時には専門家に相談を
軽うつ状態の初期は本人しかわからないことが多い。夜中に目を覚ましたり、朝早く目が覚めたり、熟睡感がなかったり、根気や集中力がなくなってきた時、調子の悪さがいつもより続くなと思った時、そんな時には専門家に相談した方がよいでしょう。世間ではこんな時に冗談にしか受け止めてもらえないことがあります。また、多くの人は励まそうとします。励まされて、頑張っても、頑張れずに、かえって落ち込んでしまうことがあります。
六 おわりに
私たちの社会はストレスに満ち溢れています。でも、これは今に始まったことではありません。昔から比べると安全に生活できるようになりました。しかし、科学技術の発達が新しいストレスを生んでいるのです。自分自身の心と体と健康のために、生活習慣やストレスヘの対処の仕方を工夫していく時代がきたのです。