日本財団 図書館


018-1.gif

 

西十勝消防組合消防本部(北海道)

 

018-2.gif

 

黒々と輝いている肥沃な大地の上には、緑の絨毯を敷きつめた様なビートや麦の畑、そして牛がのんびりと草を食む牧場、その到る所に整然と並んだ針葉樹の防風林が赤や黄の晩秋の色合いを残している。そんな雄大で美しい風景の中に西十勝消防組合消防本部のある清水町が見えてきた。

当消防組合は「食料基地」十勝の西に位置する新得町、清水町、芽室町の三町で構成され、日高山脈を西の背景にし、北に大雪国定公園を有し、南は帯広市に接し、南東周囲には雄大な十勝平野を望む一、九七九km2の広大な面積を管轄している。構成三町の中で最大の面積を有する新得町は、大雪山系への登山者が多く訪れる地であり、秘境トムラウシ温泉、新日本八景の狩勝峠、サホロリゾート等の観光地を抱え、またその気候風土を利用して栽培したそばは「新得そば」のブランドで全国的に売り出されている。ゲートボール発祥の地として有名な芽室町は帯広市に隣接するという立地条件を背景に企業進出が盛んで、街区の広がりが著しい。消防本部の置かれている清水町は、昭和五五年から町民によるベートーベンの第九交響曲演奏会を定期的に行うことから、「第九を歌う町」として全国的に有名であり、またここは道央圏への交通の要所でもある。

★所轄形態に合わせた配備

当本部は昭和四三年に北海道で最初の組合事務消防として設立許可となり、現在は一本部三署二分遣所一出張所、職員八○名と五消防団二九五名の団員で広大な管内に生活する三万六千人の生命と財産の安全を守っている。三署に水槽付ポンプ車と救急車、救助機材を配置している他、所轄形態に合わせた配備に心がけている。大雪山系の入山口を所轄する新得消防署には山林火災の備えとして林野火災工作車を配備し、また管内にある人工のクライミングタワー施設では救助訓練も行われる。日高山脈を横切る日勝峠の凍結登坂路での交通事故や登坂中のエンジン負荷による大型車両火災による出動の多い清水消防署では、化学消防車と一〇t水槽車を配備、組合構成町最大の市街地を有し、都市型救助事例が多い芽室消防署には救助工作車を配備し、消防隊員と兼務の救助隊を編成している。

 

018-3.gif

 

★頼もしい消防団

当組合各署ではその限られた職員数から、初動全力で災害に、救急救助に対応し、増援対応は消防団に頼っている。管内の五消防団は毎年二回の定期訓練を通じ、高い練度を備え、災害出動率も非常に高い。多くの町民の参加を得て芽室消防署で毎年盛大に開催される「ふれあい防火フェスティバル」においても、職員は元より全団員が催しものの役回りを勤め、火災予防指導の主力として活躍している。頼もしい消防団の活動力が署を支えている。

★救急業務の高度化

年々急増する救急出動に対応する為、平成八年から救急業務の高度化に取り組み、病院実習等の教育体制の整備を通じて、救急II課程修了者の完全充足、救急救命士は八名という状況、また平成一二年三月迄に三署に高規格救急車の配備を終える予定とのこと。更に地域住民の普通救命講習受講に力をいれ、バイスタンダーの知識技術の普及に取り組んでいる。また、管内の六五歳以上の高齢者を対象に四三九世帯に緊急通報システムを導入し、高齢化対策にも余念がない。

★オールマイティーになれ !

「小規模な消防では職員に現場で何役もの役割が課せられる。また住民もそうしたオールマイティーなファイヤーマンを必要としている。そうした住民の期待に答える為にも、職員が自覚と和を持って一体となって住民の安全確保に傾注することが大切」と合田消防長、自ら職員対話に意を配り、「まず健康管理! 現状に甘んずるな! 仕事に創意工夫を! オールマイティーになれ!」と職員を指導する。

(河野吉人)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION