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足部は切断するすき間が狭く、作業が長時間に及ぶと予想されたため、要救助者の容体悪化に備え現場に医師の派遣を要請した。

足部側のシャフトを離脱するため右側軸受け部分を工具(スパナー)等を使用し、解体を試みるが解体できなかった。

さらに、中心付近のボルトをガス溶断機で切断するが、シャフトは離脱できなかった。

両下肢が巻き付いているシャフトに五cmほど足が接していない空間があり、その位置を切断するしか方法がないと判断した。

熱傷が心配されるため、水道ホースで冷却しながらエンジンカッターで切断し、要救助者を救出した。

出血のおそれがあるため、医師の指示により、シャフトはそのままの状態で救急車に収容し医療機関(救命救急センター)に搬送した。

 

四 おわりに

今回の救助活動において、専門の技術者がいないため解体方法が分からず、現場到着から救出までに一時間四〇分の時間を要した。

また、狭く足場の悪い活動スペースの中で要救助者を目の前にして、さらに二次災害を考慮しながらの活動は、隊員にとって精神的肉体的に相当な疲労があることを改めて認識させられた事例であった。

今後、ますます複雑多様化する災害に対し今回の事例を教訓として、基本的な知識と技術の習得に努め、迅速・的確に対応し、地域住民の信頼と付託に応えていく所存である。

最後に、負傷された方の一日も早い社会復帰を心よりお祈り申し上げる次第である。

(木村誠)

 

予防・広報

火災予防は住民とのふれあいから

因島市瀬戸田町消防組合消防本部(広島)

 

は じ め に

当消防本部は、広島県の東南部に位置し、瀬戸内海のほぼ中央部に浮かぶ風光明媚な芸予諸島の島々のうち因島、生口島、高根島、細島、小細島の五つの島を管轄地域とし、瀬戸内の九つの島を一〇の橋で結んで、五月に全通したしまなみ海道沿線沿いの因島市と、瀬戸田町の一市一町で構成している消防組合です。

消防本部所在地の因島市は、全国でも唯一の島の市で、古くは村上水軍の本拠地として知られ、明治以後、海運、造船業が隆盛で全国一の造船量を誇っていましたが、大手造船企業の新造船部門の撤退により人口の減少が続き「島が沈む」とまで言われましたが、現在では、造船技術を基盤とした各企業の発展に期待が寄せられています。

最近では、江戸末期の天才棋士で、「碁聖」と仰がれる本因坊秀策の生誕の地であることから囲碁を全国でも初めて市技に制定し、棋聖戦等を招請して街の活性化を図っています。

一方、瀬戸田町は、西の日光「耕三寺」、「平山邦夫美術館」、世界の柑橘を集めた「シトラスパーク」、さらに、島のいたるところに野外彫刻を配置し、島をまるごと美術館にするといったユニークな発想で観光行政をリードしている観光地です。

そして、因島市、瀬戸田町のいずれも柑橘類の栽培が盛んで、瀬戸田町はレモンの生産が全国一で、八朔は因島市が発祥の地であります。

当消防本部は、昭和四八年に一本部・一署・一分署で消防組合を発足し、昭和五八年機構改革により一本部・一署・二分署となり、現在六二名の職員と、六三六名の消防団員とともに当管内の総面積約七二・五km2、人口、約四万人の安全と暮らしを守るため、地域に密着した消防を目指して、日々努力しています。

 

一 幼年消防クラブの活動

楽しく遊びながら火の怖さ、正しい火の取り扱いを身につけるため、昭和五八年に幼年消防クラブを結成し、現在、一〇クラブ、二八七名で組織され、火災予防運動期間中には手作りの防火号(アニメの主人公の人形を積載した車)を、揃いの法被を着用し、拍子木やミニ纏を持って地元地域を「火の用心」と連呼しながら引っ張って、防火パレードを実施しています。

防火委員会主催の消防自動車写生大会にも積極的に参加して、親子で火災予防に貢献してくれています。

クラブ員への指導は、消防職員が毎年春に各幼年クラブを訪問し、避難訓練指導、消防車の試乗会、防火アニメの映写会を通じて楽しく子供と交流し、火の怖さを体験させています。

 

 

 

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