合計六口の消火活動と同時に小型重機により、もっとも廃タイヤの少ない位置に延焼防火線の設定を施設管理者に依頼し作業を開始した。
必死の防御活動にもかかわらず、火勢は益々強くなり黒煙と悪臭が付近に立ち込め、消火活動を困難にするとともにガスによる隊員等の危険性も増大した。
このため、各署所保有の空気呼吸器及び予備ボンベの現場搬入などによりガスによる隊員の安全確保対策が図られた。
時間の経過とともに微風状態であった風向が山腹から廃タイヤに向かって強風となり、現場風とあいまって一気に防火線を突破し延焼拡大した。消防長は猛烈な火勢とガスの勢いにより、隊員の安全確保が保てないとの判断から一時退去を命じた。
その後五〇m退去し改めて消防署三線、消防団二線により火災防御体制の再構築を整え、その後も夜を徹して延焼防止に重点をおき防御活動を行った。
二日目は、岐阜県防災ヘリにより上空偵察を実施した結果、延焼部分は廃棄物のみで山林への延焼は認められず、防災ヘリコプターによる消火効力は薄いと判断され、空中消火活動を一時見合わせることに決定すると同時に、九時〇〇分美濃市長を本部長とする総合対策本部を設置するとともに継続した消火活動に並行して地元建設協力会により大型重機六台を使用し、野積みされた廃プラスチック類の分断作業を実施した。
夕方頃から延焼も緩慢となり体制も最小限の体制に縮小し消防署三口、消防団一口により継続した消火活動が図られた。
三日目は、放水を八口体制で重機の掘り起こし部分への集中注水を徹底した。現場指揮本部は、一六時〇〇分現場の総体を見聞し鎮圧を決定した。
四日目も重機による消火作業を継続するとともに、併せて特殊消火剤の実験的消火を実施し、一六時三〇分鎮火となり警戒活動に入った。
おわりに
本火災では、大量のタイヤ、プラスチックに着火した火勢の阻止は非常に困難であり、集積場所は直視できるものの、廃棄物の下にさらに埋設廃タイヤがあって、その部分までの注水は不可能であったため、消火に困難を極め、鎮火までに七一時間を要したものである。
しかし、地元の市長を本部長とする対策本部が早期に設置され、現場との連絡調整がなされたことにより、長期化した消火活動の対応も円滑に行われたものと思う。
ダイオキシンなどの有毒ガスによる隊員等の安全確保は、常備消防以外の隊員について今後の検討課題である。また、この火災では遠距離中継送水による体制が図られたが、消防団との連携の中で中継送水技術の向上等円滑な対応が図られるよう今後体制を整備する必要がある。
(西田政弘)