火災原因調査実務講座に参加して
所沢市東消防署 諸星逸夫
平成一一年一〇月四日から八日までの五日間、東京都三鷹市の財団法人消防科学総合センターが開催した火災原因調査実務講座を受講しました。
この講座には北は北海道、南は沖縄まで全国四八消防本部からの参加がありました。
受講生は三〇才代から五〇才代までと年齢差はありますが、それぞれの所属で火災調査事務に携わっている方が大半でありました。
講師は東京消防庁、横浜市消防局、千葉市消防局、川崎市消防局の経験豊かな方々で、講義内容は微小火源火災の各種実験、燃焼機器実験、化学火災実験、電気火災実験、模擬ハウスを燃やしての実況見分要領と多岐に亘るものでした。
また東京ガス田町スクールでは燃焼器具の基礎学習があり、今後の火災調査事務に大いに参考になるものでありました。
この講座は各市町村(消防本部)が火災調査業務を適正に執行するための体制作りを支援するため平成七年度から実施されているもので、今回が第八回目でありました。
なお、この講座に参加するための費用については地方交付税措置も講じられていると聞きました。
全国の消防組織を見ると東京消防庁を始めとして、消防局、市消防本部、広域消防本部等ありますが、人口、面積、また地域の特殊性から火災件数、出火原因も大きな差があり、火災件数の少ない消防本部では年間で二〇件程度と聞いております。
そして火災原因調査の結果においても各消防本部によって格差があり不明火率が極めて高いところもあるようで、この差を縮める必要があるとのことです。
今日、社会環境の変化等により生活様式も向上し化学、家電製品等で溢れている中、このような製品から火災が発生した場合、燃焼性状の特異性から火災原因究明に専門的知識のある高い調査技術力が必要であります。
また、PL法も施行されている現在、消防の調査書類が裁判上の証拠資料として扱われることを考えなければなりません。
このことから地方都市である中小消防本部の火災原因調査の資質向上を図り、また近隣消防本部との情報交換、調査支援体制も視野に入れながら消防学校等の火災調査課程もより実務的な教育が必要と説明されています。
そこで私ども消防本部の火災調査事務の処理状況を申し上げますと、この数年、管内では一二〇件前後の火災が発生しています。火災調査規程では本部予防課が主管となり火災の規模、特殊性等により本部、署処理に別れ、本部予防課長から指名された職員は市内全域を調査し、また署消防課長、所属長の指名した職員が管轄区域内の調査をしている状況です。
それぞれの職員(消防士長以上)が調査員となり火災調査事務を処理して経験を重ねています。
特に消防隊の調査員は火災出場から消火活動、実況見分、以後の調査事務全てを処理しているのが実情であり苦労もあります。
私はこの講座で各燃焼器具製品等を分解し、構造を知ると共に各種の火災実験を行い、また安全装置の作動状況、そして微小火源、化学実験等による火災発生のメカニズムを細部に渡り体験することができました。
そして各実験は貴重な機材、材料を費やしたものであり、各講師の熱意を感じ取るものでありました。
この種の講座を一人でも多くの方々が受講し、火災調査技術を向上させることが、原因不明率の減少につながるものであり、火災原因調査全体のレベルアップになると思われます。
私はこの貴重な体験を契機に今後、再現実験等を積極的に行い調査技術の向上に務めたいと心を新たにしているところであります。
短い期間でありましたが、他県の方々や埼玉県下の受講生と時間外の情報交換もでき、有意義な時間を過ごすことができました。
最後になりますが、このたびの受講にあたり各講師皆様方にお礼を申し上げると共に今後ともご教示とご指導を承りたくお願い申し上げます。