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三 活動概要

(一) 初期消火活動

現場で作業中の従業員一人が、粉末消火器一〇型三本を使用し消火にあたったが消火することができなかった。火災を知った他の従業員が、敷地外の近くの屋外消火栓からホース二本を延ばし消火作業を行った。

 

(二) 消防隊の活動

消防署から現場までの距離は七・五km。現場到着時には、従業員が消火栓で消火作業中であったが、火勢が強く、周囲へ延焼中であった。放水による消火活動は積んである車両が死角になって、消火が困難なため高発泡による消火に切り替えて、まもなく鎮火となる。

 

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四 発生原因

出火原因は、車両の燃料タンクから抜き取り中のガソリンから発生した蒸気に、静電気のスパークが引火したもの。

発生当時は、フォークリフトで車両を一・五mの高さに持ち上げて固定し、後部の燃料タンクのドレーンから真下に置いた一八lのオイル缶にガソリンを溜めていた。従業員は溜まる状況を時々確認しながら、近くで部品の片づけの作業を行っていた。缶に半分程溜まったころ、車両を背に作業をしていた従業員が突然の「ボー」という音に驚いて振り向いた時には車両は炎に包まれ、延焼していったもの。

一・五mの高さから落下したガソリンは、溜めるためのオイル缶に衝突し摩擦を繰り返し、静電気の発生する状態にあった。

オイル缶は地面の上に置かれていたが、長年の作業で地面にはオイルが染み込んで絶縁状態であった。

当日の気象条件は、午後一時には湿度は二八%と低く、作業所は周囲が囲まれていて通風は悪く、ガソリンから発生した蒸気が滞留する状態であった。

長年同じ方法で、燃料を抜き取る作業を行ってきたが、幸いにも事故も無くきたので危険物を取り扱っているという意識に慣れが生じ、いくつかの条件がそろって火災となったもの。

今回の火災は、出火してから五〇分で鎮火になったものであるが、発生原因が当消防本部では特異な事例であった。

 

五 おわりに

製造物責任法の施行を契機に、火災原因調査のあり方について関心が高まっています。しかし、科学技術の進歩とその多様化に伴い、出火原因の究明が難しくなっています。

当消防本部においても、火災原因調査を進める上で過去の事例や書籍からの資料だけでは究明が難しい事例が増えてきたため、昨年から財団法人消防科学総合センターで作成した「火災関連情報検索システム」の活用を始めました。

今回の静電気火災についても、当消防本部では過去に事例の無い火災であったため、情報検索の結果類似した火災があることがわかり調査を進めるのに大変参考になった。また、昨年一二月に発生した、高速道路を走行中の大型トラックの前輪からの出火と、新聞配達中の貨物乗用車のシガレットライターからの出火の二件の火災の原因についても、類似した火災事例が出火原因を判定するのに参考になった。

火災は予期しない場所や物が原因で発生します。一つ一つの火災原因の究明により、機会あるごとに広報、指導等を行い、火災の発生を減らすために、火災からの教訓を今後の予防行政に役立てていきたいと考えております。

(小松研)

 

 

 

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