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(五) 病院収容後の経過

病院到着後医師により、気管内挿管及び静脈路確保等の処置中、自発呼吸も出現しCCUに入院となる。

病院到着後の観察結果

意識レベル  JCS III-三〇〇

呼吸  弱く 不整

脈拍  モニター 一〇八回

血圧  一四四/八〇

SPO2  八七%

瞳孔  左右四mm 対光反射鈍い

顔貌  正常

心電図  洞調律

○ 診断名 重度の狭心症により虚血状態が続き心肺停止に至ったもの。

○ 四月一八日 自発呼吸も安定し、人工呼吸器離脱及び挿管チューブを抜管し、意志疎通良好となる。

○ 四月二九日 普通食及び歩行可能まで回復

○ 五月六日 各種検査を継続実施

○ 五月二五日 後遺症なく病院退院

○ 自宅療養後、完全社会復帰となる。

 

三 考察

本事例では、家族による早期発見と救急処置、救急隊員のあきらめる事なく実施した四回目の除細動、又、病院スタッフの懸命な救命処置等と救命の輪が一つの命を救うことができたものと考える。

現在、救急隊員の行う特定行為は医師の指示に基づき実施するとされているが、この時間的ロスを如何に短くし救命処置を実施するかが今後の課題であると考える。

 

四 おわりに

当消防本部では、平成七年六月に和泉市応急手当普及啓発実施要綱を作成し、現在年間約二千人の市民に対し救命講習会を開催しています。

また、平成一〇年七月に和泉市防災協会の支援のもと、救急応急手当の有資格者のうち三三〇名の加入者をもって救急応急手当普及啓発クラブを発足させ、人口の高齢化、疾病構造の変化等に対する心疾患及び脳疾患等の呼吸不全傷病者や交通事故による死亡者が年々増加している現状に鑑み、さらに知識と技術の向上を図りながら消防職員と一体となって市民に対する救急応急手当の普及啓発に取り組み「自らの命は自ら守る」という自主救護技能を高めてもらおうと講演会や勉強会等を開催し又、防災総合訓練等にも参加を呼びかけ震災等の大規模災害に備え「皆で力を合わせて守る」という地域における応急救護体制の確立を目指してクラブ活動を実施している。

(川阪京市)

 

予防・調査

自動車解体工場火災の調査

伊那消防組合消防本部(長野)

 

当消防本部は、長野県の南部に位置し、東に南アルプス、西に中央アルプスの稜線を仰ぎ、その中央を南北に天竜川が貫く、山と水と緑に囲まれたところです。

昭和四八年四月に、伊那市、高遠町、辰野町、箕輪町、南箕輪村、長谷村の一市三町二村をもって発足した。管内の人口は一三万余人、面積は九六四km2である。

現在の消防体制は、職員数一四二名で、四署一分遣所である。

ここに紹介する事例は、当消防本部内の自動車解体工場で発生した火災調査事例である。

 

一 火災の概要

(一) 出火日時

平成一一年五月一七日(月)

一三時四〇分頃

(二) 出火場所  自動車解体工場

(三) 覚知時刻  一三時四三分

(四) 鎮圧時刻  一四時一五分

(五) 鎮火時刻  一四時三〇分

(六) 気象状況  天候 晴れ

気温 二五℃

湿度 二八%、風向 南

風速 〇・五m/s

(七) 焼損状況  半焼

焼損面積一二〇m2

フォークリフト一台他

(八) 出場車両及び人員

消防署 六台  二〇人

消防団 二台  三二人

 

二 出火当時の概要

この工場では、廃車になった車両からオイル、燃料を抜き取り、再利用できる部品を解体し、最後に車体をプレス機で圧縮する作業を行っていた。当日は、午前中に九台の乗用車から燃料、オイルの抜き取り作業を行い、昼休みを終えた午後一時から再び作業を始め、一台の車の燃料タンクから、ガソリンを抜き取る作業中に突然出火して、周囲の廃車車両、積み上げてあったタイヤ、フォークリフトと工場の屋根部分を焼損した。

 

 

 

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