救急・救助
高架橋下へ転落の救急救助活動
名取市消防本部(宮城)
はじめに
名取市消防本部は、県の南部に位置し政令指定都市である仙台市に隣接しており、管内は東西に一一キロメートル、南北に八キロメートル、総面積一〇〇・〇七平方キロメートルである。当市は名取川、阿武隈川の両水系に囲まれた肥えた土壌を有し、西部の山地、丘陵地帯、東部の海岸地帯、中央の平地帯と分けられるのが特徴である。
また、東北本線、国道の他、空港、東北新幹線、仙台東部道路、東北自動車道など交通網が集中している。人口は六万五千人でその約半数が東北本線、国道四号線沿いに集中し、近年、山手地区に新しく団地造成が進み、人口が急増している。
当消防本部は、昭和四一年四月政令指定を待たずに、市独自で本部、署を設置、現在は一本部、一署、三出張所、職員八七名の体制で消防業務を行っている。
今回紹介する救急救助事例は、山手地区の新興団地入口に掛る橋の取付部分より二五メートル下に転落した要救助者の収容事例である。
一 事故概要
(一) 発生日時 平成二年三月二日(火)
一五時三〇分頃(推定)
(二) 発生場所 名取市高舘、相互台団地入口新豊橋脇
(三) 時間経過 覚知時間 一五時四〇分
高舘出張所(駆け込み)
現場到着 一五時四六分 高舘出張所隊
一五時五六分 救急一号車隊
一六時〇二分 救助工作車隊
救助完了 一六時三八分
(四) 要救助者の状況等 男 四〇歳 中等傷
(五) 使用資機材 ロープ、カラビナ、小綱、舟型担架、梯子、毛布(保温)
(六) 出動隊及び人員 救助隊三名、救急隊三名、出張所隊三名
二 事故発生の状況
事故発生の場所は丘陵地帯、新興団地入口付近に掛る橋たもとを歩行中、下を覗き込んでいるうち誤って足を滑らせ、大沢川法面に転落し負傷したものである。
三 活動概要
タクシー運転手が高舘出張所に駆け込みにより通報、直ちに出張所隊は内線電話にて救急車を要請後、現場に出向する。
救急指令により本署から救急車にて直ちに出動する。最先着隊の高舘出張所隊は現場状況確認により、出張所隊及び救急隊のみでは、救出するのは困難と判断し、救助隊の出動を要請する。転落した負傷者は急傾斜地の大沢川法面に半座位の姿勢で横たわっており、顎及び右膝部より出血があったが、問いかけには応答できた。後続の救助隊が到着する間に梯子を利用し、川向かいに移動、倒れている要救助者の傷病程度の観察、さらに応急処置等を実施する。まもなく救助隊到着、さっそく救助隊長は、現場付近調査、また救急隊に傷病程度の観察状況等を聴取した結果、救出方法をロープブリッジによる担架救出を決定し各隊員に任務分担を指示、橋脚及び土砂崩落防護策の鉄柱にロープを係留してブリッジ線を展張、要救助者をバスケット担架に乗せ各隊協力して引き寄せ救出し救急隊へ引き継いだ。