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三 活動の概要

指令室からの第一出場指令に基づき、水槽付きポンプ車五台、普通ポンプ車、救助工作車、救急車、梯子車、指揮隊車各一台の計一〇台が直ちに出場した。

最寄の城北分署消防隊は、出場途上、現場方向の空が真っ赤に染まり、炎と黒煙が上昇しているのを確認したので、炎上報を指令室へ連絡、これを傍受した指揮隊から第二出場の要請がなされた。

城北分署消防隊が、踏切で電車通過待ちを余儀なくされつつ最先着隊として現場に到着したときは、すでに一棟は焼け落ち、北側の木造二階建住宅、南側の鉄筋コンクリート造平家建物置、さらには、西側の木造モルタル二階建住宅へと延焼拡大中であった。

現場は、西側にいくほど敷地が高くなっており、急速に西側へ延焼拡大していった。

道路条件、水利条件等に阻まれて、消防隊の進入路が東側だけに限定されてしまい、延焼を追いかける体制が強いられる傾斜地特有の状況であった。

しかし、順次到着した消防署・消防団(隣接分団まで出場)の各消防隊が連携して中継送水・ホース延長等を展開した結果、包囲隊形を整えることに成功した。

やがて、火勢は鎮圧し、西側に広がる雑木林へは、延焼せずに鎮火した。

 

四 今後の課題

本火災が延焼拡大した原因は、防ぎょ体制の確立が困難な傾斜地で発生したこと、水利が十分でなかったこと等が挙げられるが、通報の遅れも見逃せない。

出火建物は、留守であったので、建物外部に火炎が噴出してから付近道路を通行中の者に発見された。しかし、この第一発見者は、周辺の地理に不案内であったので、出火場所の地番はもちろんのこと、周辺の目標物さえも十分に伝達されなかったため、通報を受信した通信指令室では、出火場所の地域さえ絞り込むことができない状況であった。さらに携帯電話を使用しての通報であったことが、出火場所の確定をより困難なものにしていった。

やがて、かなり延焼拡大してから付近住民が気付き、この第二通報により災害地点を確定することができたのである。

本市では携帯電話による一一九番通報は、横浜市消防局又は川崎市消防局を経由してから本市へ転送されるシステムになっているので、本火災事例等を踏まえ、携帯電話から直接一一九番通報を受信できるシステムに切り替える(今年度中に、完成予定)とともに、地理不案内な通行人等からのあいまいな通報にも的確に対応できる通信指令体制の確立を目指して、改善計画を推進している。

また、消火栓等の水利状況について再検討を行い、消火栓増設計画を推進するとともに道路狭溢地域、防ぎょ困難地域等の警防計画の再検討を進めている。

 

五 おわりに

本火災は、今後の火災防ぎょ活動に多くの教訓を残しただけでなく、通報方法、その受信体制等にも様々な教訓を残した。

これらの教訓を真摯に受け止め、さらなる警防体制確立の推進は、もちろんのこと、各地域での防災訓練等の機会をとらえ、火災予防及び災害時の通報・活動等についてより一層の啓発普及を推進することも重要と考えられる。

(小関正男)

 

 

 

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