火 災
傾斜地における住宅火災
小田原市消防本部(神奈川)
はじめに
小田原市は、神奈川県の西部に位置し、相模湾に向かって開けた平野を山と丘が囲んだ地形となっている。
黒潮の流れる海に面し、気候温暖で丘陵地ではミカン、梅などの果樹栽培、平野部では豊富な水を水源に工業と農業、相模湾では沿岸漁業と、幅広い産業が営まれている。
人口二〇万余人、面積一一四・〇六km2の中核都市として、また県下有数の交通の要衝となっている。
当市では、これからのまちづくりの道標となる新総合計画「ビジョン21おだわら」を策定し、小田原を世界に誇れる個性的で魅力ある都市にしていくための、さまざまな施策を推進している。
消防体制は一本部一署六分署、職員数二一八名、消防団一団二二個分団七三二名で組織されている。
また、東海地震や神奈川県西部地震などの発生が危惧されており、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、大規模な災害に対応できる消防・防災体制の整備を進めている。
一 火災の概要
(一) 出火日時 平成一一年一月二一日
一八時四五分頃
(二) 覚知時刻 一八時五九分(一一九)
(三) 出火場所 小田原市府川八八番地
(四) 鎮圧時刻 二〇時二九分
(五) 鎮火時刻 二一時四六分
(六) 気象状況 天候 晴
気温 五・七度
相対湿度 三四・五%
実効湿度 六五・六%
風向 北北東
風速(最大) 四・四m/s
(七) 被害状況 全焼 五棟
焼損床面積六六一m2
り災世帯 三世帯
損害額 一七、七九七千円
負傷者 二名
(八) 出火原因 放火の疑い
(九) 出動車両及び人員
消防署 一一台 七七名
消防団 四台 一二五名
(一〇) 消防水利の状況(一四〇m以内)
消火栓 一基(二〇〇mm)
防火水槽 一基(一三トン)
二 付近の状況
現場は、小田原市消防署城北分署から南へ約三kmの地点に位置する丘陵地で、西側にいくほど高くなっていく傾斜地の状態である。
主要地方道から現場に通じる道路は、狭溢で、消防車両の通行に支障があり、さらに道路が登り勾配になっているため、ホース延長が困難な地域である。
出火した建物の北側には養魚場があるが、出火当時は、大半の水が排出され、有効な水利として使用できない状況であった。
西側には雑木林が広がり、南側には、狭溢な道路をはさんで住宅や雛壇状の田畑が広がっている。東側には、比較的新しい分譲住宅が主要地方道まで建ち並んでいる。