日本財団 図書館


2] 奈良地裁の判決で、奈良市消防本部元次長の欧州視察に対し、観光旅行だとして旅費返還訴訟で、派遣職員の選考過程は裁量の範囲として訴えを退けたもの。(朝日新聞一九九九・八・五奈良版朝刊)(注一〇)

3] 東京消防庁における火災予防審議会地震対策部会の資料と議事録を、インターネットにより情報を公表。

4] 愛知県犬山市消防本部における消防白書のインターネットによる情報提供。

消防行政における情報公開の事例は、他の行政分野に比べ多いとはいえない。しかし、住民の安全・保護や企業との利害関係が直結する業務だけに、情報公開はいつでも対象となるとともに、情報提供が常に求められる分野である。

 

2 情報公開を前提とした事務執行

したがって、行政事務の執行にあたっては、常に情報公開を前提とした事務運営がなされる必要がある。また、関係団体との事務との明確な一線を画し、あいまいにならないよう配慮しておくことも必要条件といえる。

このためには、情報公開における他の行政部門での判例を参考として、運営していくことは有効である。

例えば、食糧費の伴う会議の運営、職員の出張、実体上の管理主体と法制上の管理主体の差異、情報公開の迅速化について、特段の配慮が必要なことである。

また、対象文書についても、町田市の例にみられるように、入札・契約関係文書以下の文書管理の適正化が期待されるところである。

 

3 職員の意識改革が大切

情報公開の期待にこたえ、ガラス張りの消防行政を推進するためには、日常扱う行政情報は、住民との共有物であるとの認識をもつことが大切である。

また、職員相互の情報の共有化を推進し、重複資料の持ち合いや相互利用を阻害する要因を排除しなければならない。そのため庁内の情報化により、文書が電子化された消防行政事務の推進が期待されるところである。

更に、情報公開は、住民の個人情報保護とも表裏の関係をもっている。プライバシー保護の観点から、個人情報の過剰収集にならないよう配慮しつつ、その保護に万全を期していく必要がある。

情報公開には、行政の透明性の確保のため、情報は住民と共有すべきものとの意識を持つことが不可欠である。そのためには、職員の意識改革こそ、もっとも大切であるといえよう。

 

参考文献等

注一 「オープン経営」『日経情報ストラテジー』一九九八年五月

注二 情報公開法は略称。正しくは「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」施行期日は、公布の日から二年以内としている。

注三 条例の名称は、「公文書の公開に関する条例」等としている地方公共団体もある。

注四 堀部政男「情報公開制度・個人情報保護制度の回顧と展望」『情報公開・個人情報保護』有斐閣 一九九四年五月

注五 自治省調べ。九〇八団体には、要綱によるものも含んでいる。都道府県の制定率は一〇〇%、市区町村別の制定率は、市(六八・一%)、区(一〇〇%)、町(一五・四%)、村(一三・二%)となっている。

注六 稲葉清毅「電子政府と情報公開」『変革期のメディア』有斐閣一九九七年六月

注七 畠基晃『情報公開法の解説と国会論議』青林書院、一九九九年五月

注八 「平成九年度港区情報公開制度運用状況年次報告書」一九九九年一月、および「町田市における一九九八年度情報公開・個人情報保護制度運用実績報告書」一九九九年八月より。

注九 ニフティデータベースの「ニュース・記事情報(新聞社系)から検索・収録した。ただし、福岡地裁判決は除く。

注一〇 ニフティデータベース「朝日新聞記事データベース」から検索・収録した。

注一一 町田市情報公開ハンドブック

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION