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2 他が作成した行政文書を保有している場合の対応

地方公共団体が作成した文書で、国に提出された文書は、どうなるであろうか。この場合、国が組織として保有している以上、情報公開法の対象となるとの国の判断である。

一方、国が作成した文書を、地方公共団体が組織として保有している場合は、情報公開法の対象外となる。この場合、当該地方公共団体の条例により請求されるとしている。

この点、具体的な対応にあたっては、相互に連携をとり、的確な判断が期待されるところである。

 

3 情報公開法の留意点

 

(1) 知る権利について

近年、地方公共団体の情報公開条例の制定または改定にあたって、「知る権利」の保障とそれを住民の開示請求権の根源とするところが増加する傾向にある。

これに対し、国の情報公開法の制定にあたっては、「知る権利」を目的規定に明記していない。それは「憲法学上様々な見解があり、最高裁判所の判例においても、政府情報の開示を請求する権利として認知されていない。このように、知る権利の概念については多くの理解の仕方がされているため、この言葉を情報公開法に用いることは適当でない。」とされている。この点、地方公共団体の動向とやや異なるところであり、今後論議を呼ぶところとなろう。

 

(2) 説明責任の明記

情報公開法では、行政機関の保有する情報の原則開示の義務化とともに、政府の諸活動を国民に説明するという政府の責務(アカウンタビリティー)が全うされるようにすることを明記している。この説明責任については、地方公共団体の条例において、必ずしも明確な規定があるとはいえず、今後の検討課題である。

 

(3) 公務員の職務遂行情報の開示

情報公開法の執行にあたっては、公務員の職に関する情報を、明らかにする意義は大きいとしている。それは、行政事務に関する情報として、その職務行為に関する情報と不可分の要素であり、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにするためとしている。

そこで、公務員の範囲を限定せず、仮に特定の公務員を識別させることとなっても、開示することとした、とされている。

しかし、開示されるのは、職名と職務遂行内容であり、公務員の氏名については不開示情報としている。公務員の氏名は、これを開示すると、公務員の私生活等に影響を及ぼすことがあり得るので、一律に開示することとはしていない。

なお、中央省庁の課長相当職以上の者の氏名は、「公にされている情報」として開示されることとなる。

これらの点は、先にみた判例との関係から、今後、なお論議を呼ぶところとなろう。

 

(4) 情報提供の努力義務

情報公開法は、情報提供の努力義務を明記している。行政の側から自ら積極的にその保有する情報を国民に提供することにより、開示請求制度と相互補完しあいながら、情報公開法の目的をよりよく達成するとしている。政府では、現在、インターネットによる情報提供が積極的に進められているところである。この動向は、地方公共団体にも大きなインパクトを与えることとなろう。

 

(5) 情報公開法の水準への検討項目

地方公共団体における既存の条例の内容について、情報公開法の内容の水準に近づけるよう求められているが、その具体的検討項目を整理すると、つぎの点があげられよう。

説明責任の明記

開示対象文書の範囲

不開示情報の類型、なかでも不開示とされない個人情報の範囲、審議・検討等に関する情報、行政機関の事務・事業に関する情報

情報提供の努力義務、特にインターネットやファクシミリによる情報提供の推進

などである。

 

七 消防行政への課題

 

1 消防行政における情報公開等の事例

消防行政における情報公開としては、近年ではつぎの事例がある。

1] 川崎市議会において、東燃(株)川崎工場の改善計画書の公開を、情報公開条例の趣旨をくんで議員から公開を迫られた。(朝日新聞一九九六・二・一五神奈川版朝刊)(注一〇)

 

 

 

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