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県では「支出額や支出内訳などは公開したが、相手先や懇談場所は、行政の執行に著しい支障を生じるとして、非公開を主張していたものである。」

これに対し判決では「懇談会に参加した者の所属庁名や職種などが明らかになっただけでは、懇談会の運営、開催に著しい支障が生じるとは認めることはできない」との判断を示したものである。(出所 毎日新聞一九九七・二・一七東京本紙夕刊)

大阪地裁判決(一九九七年三月被告大阪市)

「接待・飲食の相手の氏名などの公開について、公務員に加え、民間人でも、その職務として食糧費が使われる会議などに出た場合は公開の対象となる。」との判断を明確にした。

この場合「民間人としては、審議会・医療・大学・金融・報道の関係者、外国人来賓から各種団体所属者まで列挙。」「民間人でも、個人の資格を離れ、職務として役所の会議などに出るのは、私的な問題ではない」と判断されたものである。(出所 読売新聞一九九七・三・二六大阪朝刊解説)

 

2 出張職員名の公開命令

名古屋地裁判決(一九九七年三月被告愛知県代表監査委員)

「個人情報であることを理由に、出張した職員の名前などを非公開としたことに対し、名古屋市民オンブズマンが、非公開処分の取消しを求めた訴訟である。判決は、公務に関することは、個人情報に該当しない」と判示されたもの。

「同訴訟では公務の出張が、個人情報として同条例に規定する非公開条項に当たるかどうかが争点だった。判決は、条例の趣旨からすると、公務員個人に関する情報としての側面を持つものであっても、公務員が公務を遂行するに当たり、特に秘匿されていないものについては、非公開とする個人情報と解釈することはできないと判断された。」ものである。

(出所 読売新聞一九九七・三・二七中部朝刊)

 

3 県警公文言も開示対象

福岡地裁判決(一九九九年四月被告福岡県)

「福岡県警や県議会の懇談会費や旅費の支出に関する公文書が公開されなかったのは違法として、市民オンブズマン福岡の会員が福岡県知事を相手に非開示処分の取消しを求めた訴訟である。」

判決では、「知事が法律上の管理主体となっている公文書であれば、実際には管理していなくても公開対象になり得るとの判断を示した上、県警本部や県議会の公文書も条例上、知事が管理する文書に当たり、開示請求の対象になる」として、非開示処分を取消した。

県側では、「知事部局で管理している文書ではないとの理由で、公文書不存在」を通知していたもの。また、主張として「問題の文書は、県警察文書規程と県議会事務局規程にもとづき、県警本部や県議会に返還されることになっていたから、知事が管理しているとはいえない」などとしていたものであった。(出所 産経新聞一九九九・四・二七東京朝刊)

 

4 公開遅れに賠償命令

秋田地裁判決(一九九七年三月被告秋田県)

「秋田県の食糧費を巡る公文書公開で、県が公開決定してから三〜六か月以上も文書を公開しなかったために精神的苦痛を受けたとして、市民団体代表が同県に慰謝料など三百六十万円の損害賠償請求を求めた訴訟である。」

判決では、「故意に非公開を続けた(不作為)として、県に対し三十万円の賠償を命じたもの」である。(出所 読売新聞一九九七・三・二七東京夕刊)

 

六 情報公開法と地方公共団体の対応(注七)

 

1 情報公開法と地方公共団体の関係

情報公開法の適用対象機関は、国会と裁判所を除くすべての国の機関であり、地方公共団体は特殊法人とともに、対象外となっている。

しかし、地方公共団体に努力義務として、未制定団体の条例化を促進するとともに、制定済みの団体にあっては、既存の条例の内容について、情報公開法の内容の水準に近づけるよう求めている。このことから、地方公共団体においては、法律の原型となった情報公開法要綱案が示された段階から、すでに条例の見直しが進められてきているところである。今後も、地方公共団体ごとに条例の制定・改変が続けられ、現在の制定率二七%から、大幅に増加することが期待される。

 

 

 

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