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このような状況において、地方公共団体では、一九八二年三月に山形県金山町、同年一〇月には神奈川県が、それぞれ条例を制定した。その後、順次その動向は拡大し、今日に及んでいる。国の情報公開法の制定も、地方公共団体の動向が、要因の一つとなっているといえよう。

しかし、一九九九年四月一日現在における地方公共団体の条例化の状況は、九〇八団体二七・五%(図1)と低い。このことから、地方公共団体としては、より一層の取組みが期待されるところである。(注五)

 

二 情報公開条例による制度化の状況

 

つぎに、地方公共団体の情報公開条例による制度化の状況をふまえ、「だれが」「なにを」請求できるかについて、見ていくこととしたい。

 

1 「だれが」請求できるか

地方公共団体が、情報公開を条例化するにあたって、「だれ」に請求権を認めたかについては、二つに分かれている。

一つは、「何人も認める」とするものである。もう一つは、「在住・在勤の個人、事業所を有する法人、利害関係を有する個人・法人」とするものである。

前者は、行政区域を越えて人的・経済的交流がなされている実態をふまえ、国内外を問わず、また、請求の理由や目的のいかんを問わず可能とするものである。したがって、他の地域の企業が、営利目的のために請求することもできる。

後者は、地方公共団体として、本来的に住民との信頼関係を確立し、住民に開かれた行政を期待することをねらいとして、住民を中心に、関係人を限定する考え方にもとづいている。

近年制定される条例は、前者の「何人も認める」とする傾向が強い。国の情報公開法は、この「何人も認める」こととしている。このため外国人も当然に含まれる。

 

2 「なにを」請求できるか

情報公開の対象となる「なにを」については、文書の記録媒体の種別、決裁済かどうか、情報の内容によって、地方公共団体により異なる扱いになっている。

 

(1) 情報の記録媒体による区分

情報公開は、公文書に手を加えずに、あるがままの姿で公開しようとするものである。

条例化にあたっては、この文書の記録媒体の差異により「電子情報を除くもの」と「電子情報を含めるもの」との二つに分かれている。

前者の考え方は、紙やフィルムなど容易に可視的状態にあるものに限定する考え方に立っている。

電子情報を対象とすると、例えば、コンピュータの磁気テープの場合、全部の複写か、このなかから検索と編集を行うため、コンピュータの稼働が必要となる。また、必要に応じプログラミングの負荷も無視できない場合も想定される。

情報公開の目的を果たすためには、実際には、可視的な文書化に変換することによって、はじめて可能となるとの判断にもとづいてのことである。

一方、後者の考え方は、電子情報化の動向を踏まえ、文書を広く解釈し、コンピュータの磁気テープなども含めるものである。この結果、文書が記録されている媒体のすべてを含む。具体的には、紙の文書、図画、写真、フィルム、録音・録画テープ、磁気テープ、磁気または光ディスクなどが対象になる。

今後、情報技術環境の変化をふまえ、情報公開の制度化にあたっては、一般的動向として電子情報を含めていくこととなる。しかし、前者がかかえる課題が残ることにも、留意しておく必要がある。

米国においては、電子情報公開という考え方から、一九九六年一〇月に情報自由法を改正し、「同年一一月以降に作成された記録については、その日から一年以内に、コンピュータ通信を含む方法等により、入手できるようにしなければならない」(注六)と定めている。将来の課題として、わが国でもこの動向に注目しておく必要がある。

 

(2) 決裁済文書かどうかの区分

つぎに、決裁過程の取扱いについて、「決裁済みの文書」に限っているところと、「決裁途中の文書」を含むところに分かれている。

前者は、未確定文書の公開は、混乱を招くとの考えにたっている。後者は、公開することにより、公正な意思決定の妨げにならないとの考え方にもとづいている。例えば、打ち合わせの記録や会議資料などがある。

 

 

 

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