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情報公開について

消防大学校講師 茶谷達雄

 

はじめに

ガラス張りの行政運営は、現在、行政に強く求められているところである。また、疑問点があれば、十分に説明することも求められている。これらは、住民との信頼関係の確立に、欠くことのできないものである。これを制度化したものが、情報公開である。

このことは、行政分野のみに止まらず、民間企業でも同じである。経営の透明度の高い企業ほど、顧客や取引先からの信頼性が高く、これが二一世紀に生き残る企業の条件ともいわれている。(注一)

国においては、本年五月に情報公開法(注二)が、国会において可決成立をみた。これにより、国民に開かれた透明な行政の実現をめざすとしている。

消防行政においても、これらの動向をふまえ、情報公開を前提とする運営が、一層期待されるところである。

 

一 情報公開制度の趣旨と制度化の動向

 

1 行政機関が保有する情報に対する見方・考え方

情報公開制度は、ガラス張りの行政を進め、公正・信頼のある行政を確保するために、行政機関が保有する情報は、行政の資源として、住民と共有されるべきとの、見方・考え方に立っている。実に、情報公開の基本はここにある。

これにより住民が情報公開を求め、住民が自ら状況を知ることができる。「情報なくして、参加なし」である。

法的には、憲法九二条「地方自治の本旨」からくる住民自治による直接参政権を、有効に活かす手段として、認識されている。実際の運営にあたっては、地方公共団体ごとに情報公開条例を制定する。(注三)これにより、住民に情報公開を請求できる権利(開示請求権)を創設するとともに、行政機関に対して、公開の義務を負わせるものである。

情報公開制度には、このほかに請求を待つまでもなく、行政機関が積極的に情報を提供するよう努力義務を設けている。なかには、重要施策等については、公表を義務づけしている場合さえある。この情報提供の手段としては、各種の広報媒体や近年進展の著しいインターネットのホームページの利用が普及しつつある。

これらの情報提供は、開示請求制度とあいまって、情報公開制度の目的を総合的に、よりよく達成しようとするもので、広義の情報公開制度に含められるものである。

 

2 情報公開制度化の動向

情報公開制度化への取組みは古い。堀部政男教授(現中央大学)によれば、つぎの三つの時期に分けられるとされている。(注四)

第一期「知る権利の認識・制度化提唱」の時期 一九四〇年代後半から一九七〇年代前半

第二期「情報公開制度化の提唱と実現」の時期 一九七〇年代後半

第三期「情報公開制度の運用」の時期 一九八○年代前半以降

なお、私見だが今日の状況をふまえると、第四期として「国の情報公開法の立法化」の時期 一九九〇年後半を追加できるであろう。

 

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図1 情報公開条例の制定・非制定団体の比率

 

 

 

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