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地下鉄を防護するエアカーテン

最近開通したパリ地下鉄メテオール線のシャテレ駅とピラミッド駅には火災により発生する火煙の拡大を防止して人々を安全に避難させることを目的としたエアカーテン設備が設置されている。

パリ地下鉄では各駅の改札までの出入地下道はそれぞれ一方通行になっている。エアカーテンは、地下鉄の通路及びその他区域の天井か又は壁体からエアを内部に吹き出して空気の流れ(風)を止める役割を果たすドアのような働きをする。火災により発生する煙や有毒ガスは、地下鉄内の各区域における気圧の相違に応じて煙や有毒ガスと同じ圧力で噴出するジェット気流により閉じ込められる。

エアカーテン設備は、一九九〇年の初頭からフランスの建築科学技術センター(CSTB)で高さ二・五m、幅三mの装置を使って多くの実験を行った結果設置された。メテオール線の五か所の通路は高さ二・一m、幅が四mから七mなので、通路の幅に応じて二基かそれ以上のエアカーテン設備を両側に(計四基以上)設置して、一〇kWの電源を使って向き合いにジェット気流を発生させてエアカーテンを作っている。

エアカーテン設備は、大気中に二五パスカルの圧力差が生じると作動する。エアジェットは、遠心式ベンチレータ(ファンによる換気装置)によりエアを毎秒二二mのスピードで噴出して作られる。同設備における問題点は、煙やガスの流れを止めるためにそれら流れの斜め反対方向から噴射しなければならないことと、天井か壁からエアジェットを効果的に噴出する場合通路の天井高は三m以下としなければならないことである。

また、将来フランス国鉄とパリ地下鉄とがエオル駅とガールデュノール(北駅)で連結される予定で、国鉄エオル駅の地下通路は毎時約八、〇〇〇人の乗客が利用することが予想されるので地下通路の幅が一三mから一八mとなっている。そのために、エスカレータ、柱、改札口等複雑な要素を備えた高さ二・九m、幅八・七m、奥行き一二mの実物大の実験装置を作ってさらに実験を重ねている。実験は、毎秒三〇mのエアジェットを噴射して六〇パスカル以上の圧力差に対して効果を発揮するエアカーテン装置を開発することを目的として行われているが、さらに毎秒三五mのジェット噴射で八〇パスカルの圧力を阻止できることが明らかになった。

エアカーテン設備は、輻射熱を止めることはできないが、地下通路における気流(風)を阻止することによって煙や有毒ガスの外に高熱の伝播も減少させることができる。輻射熱については、エアジェットに直径五〇から三〇〇ミクロンの微粒水噴霧を加えることにより減少させることができる。同設備は、その外多くの環境を改善するのに役立てることができるという。

(文責 大野春雄)

 

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