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また、発災後の調査において、指定数量以上の危険物を貯蔵しているにもかかわらず、法的手続きがなされていないことが判明し、厳しい措置を行ったところである。

幸いにして、違反貯蔵危険物への延焼は免れたが、類似施設においては、危険物の貯蔵取り扱いが行われるおそれがあり、また、関係者の消防法令に関する認識不足も考えられるため、関係者に対する火災の発生防止と危険物の保安管理についても指導が必要である。

今後とも人心の安定と生活環境の保全の観点からも警防対策をはじめとする各種対策に万全を期していかねばならないと考える。

(伊藤 久則)

 

救急・救助

原動機付自転車の少年がトレーラーに巻き込まれる

野田市消防本部(千葉)

 

はじめに

野田市は、千葉県の北西部に位置し、海抜平均一三・二mの平坦地で、地形は南北一五?q、東西一二?q、南北に向かっておおむね長方形でその面積は七三・七二?q2、気候風土に恵まれた土地であり、東京都心まで三〇?qという利便性から東京のベットタウンとして人口もゆるやかではあるが増加し、現在約一二万一千人、消防体制は一本部・一署・三分署、職員一一五人である。

当市は、利根川・江戸川・利根運河と三方を川に囲まれ、古くから水運に恵まれて醤油醸造の地として発展してきた。近年は工業団地が整備され、各都市を結ぶ主要道路が市内を縦横にはしり、交通渋滞を避け深夜から早朝にかけ特に大型陸送車両が多く通過している。

ここに紹介する事例は、市内の幹線道路で発生した大型トレーラーと原動機付自転車の事故に際し、現場へ民間の大型レッカー車を要請、救出まで約二時間を要した交通事故の事例である。

 

一 事故発生概要

(一) 発生日時

平成一〇年八月六日(木)

午前五時五五分頃

(二) 発生場所

野田市金杉地先

主要地方道つくば・野田線路上

(三) 事故形態

大型トレーラー車〔コンクリート柱四本(六t/本)積載〕対原動機付自転車

(四) 時間経過

覚知時分  午前五時五八分

現場到着時分  午前六時〇三分

民間車両要請時分  午前六時二四分

救出完了時分  午前七時四二分

(五) 要救助者

男性 一六歳 死亡

(六) 出動車両・人員

救助工作車  一台 四名

救急車  一台 三名

(七) その他(要請)

民間大型レッカー車  一台 二名

 

二 現場到着時の状況

事故の発生場所は、埼玉県と茨城県を結ぶ幹線道路と市道との見通しの悪い信号機のない交差点で、救助隊・救急隊が同時に現場到着したところ既に警察官によって交通規制が行われていた。

事故は大型トレーラーと原動機付自転車によるもので、路上には数一〇mにわたり原動機付自転車を引きずった跡と血痕がはっきり残り、要救助者は大型トレーラー右側後輪三軸目ダブルタイヤの隙間約一〇?pに側臥位で腹部が挟み込まれた状態、しかも付近には要救助者の欠損した臓器が散乱し事故の凄まじさを物語っていた。

 

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