三 活動状況
通報後、消防署からは軽化学車等が出動するが、最先着隊到着時の火勢状況は、他の燃焼媒体へ移行拡大中であった。以降は、段階的な消防隊の増援要請が行われ、泡消火の効果も低く、七mまで高く積まれた可燃物を徐々に移動させながらの消火作業は、夜を徹して行われ、完全消火まで約一九時間を要したものである。
火災は、パワーショベルに乗車した従業員が遠隔操作により廃棄車両の切断作業を行っていた際発生した。
切断機のカッター付近で爆発音とともに、切断されていた廃棄車両は一気に炎に包まれた。以前にも複数回、切断中の廃車が燃えたこともあり、その都度、自分たちで高圧洗浄ホースによる注水で消し止めていた。今日も消せるの驕りからか、消火器の使用をはじめ注水や炎上車両の移動も試みているが功を奏さず、事務所の加入電話から一一九番通報した。結果的には、消防機関が本件の火災を覚知するまで相当な時間を要することとなる。
敷地内とりわけ、廃棄車両等の集積場には三、〇〇〇m3程度の量のものが野積み状態で置かれていた。しかし、東・南・西側の三方の高塀は、防火壁を果たし、延焼拡大の危険はなかった。このため最先着隊の軽化学車(泡発泡消火原液三〇〇リットル積載)は、施設関係者の安全の確認と避難の指示を的確に行いながら、液体酸素タンク(二八・四二kg)及び事務所棟への延焼阻止を優先に消火活動を開始し、その後中継送水を受けてピックアップノズルによる消火に切り替える。なお、周辺の消防水利状況としては、現場周辺半径一五〇m以内の消火栓四基全てに部署した。指揮者は、火勢の拡大予測を計り、照明車の他、化学車・梯子車・特殊災害用コンテナ車等特殊車の増援要請を行うとともに、大阪航空局保有車両との連携を図り、包囲隊形並びに中継送水体制等の戦術と組織的な活動(別図参照)が長時間に亘って展開された。
なお、消防団員は、消防警戒区域の設定ロープの展張、車両部署の誘導のほか、残火処理等多方面の活動を行った。
消火に使用した水及び泡消火薬剤は、敷地の鉄製塀があったため、河川への流出は少量に留まった。