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六 消防通信問題検討委員会での検討

特別研究委員会での消防・救急無線のデジタル化に伴う技術面の検討とは別に、平成一〇年一二月より「消防通信問題検討委員会」(構成一五消防機関 事務局・神戸市消防局)のなかでデジタル化への移行、実施時期、財政措置、通信運用のあり方、消防機関の実施スケジュールの把握等について検討を行い、平成一一年三月に報告書としてまとめられました。各検討項目の要旨については、以下のとおりです。

【デジタル化への移行】

消防機関からみたデジタル化の必要性、無線機器の市場動向予測、通信方式統一の必要性、郵政省の動向等から、消防の情報通信機能の充実強化のためには、デジタル化が必要不可欠であり、消防全体としてのデジタル化に対する総意を得る必要がある。

【デジタル化移行に当たっての実施時期】

自治省消防庁は、平成一一年度から二ヵ年計画で実験機を試作し、フィールド実験を行う計画であり、機器の製品化は平成一三年度以降になることが予測されることから、デジタル化移行開始時期は、平成一四年度以降で、財源の目途と機器の低価格化の目途がたった後となり、移行期間は、概ね一〇年を目途とすることが望ましい。

【デジタル化に伴う財源措置】

デジタル化導入は、各消防本部にとって非常に大きな財政負担となることから、高率補助制度の創設、地方債の充実、地方交付税の充実、都道府県による補助制度の創設等を関係機関に要望する。

【デジタル化に伴う運用体制のあり方】

デジタル化導入時に予想される問題点

(1) 全国共通波等のあり方

大規模災害や同時多発火災等で広域応援部隊間の通信を確保するための全国共通波としては、各都道府県単位で割当てを受けている県内共通波及び全国共通波を統合し全国共通波として活用する方式が望まれる。移動局については、標準化した機器に全ての周波数を装備し、広域応援等の際に被災地消防本部の指定する周波数で運用する方式の導入が望まれる。

(2) 全国共通波等の移行期間中の運用

現用のアナログ無線機とデジタル無線機の直接通信ができないため、移行期間中は相互応援や広域応援活動に備え、アナログ無線機とデジタル無線機を併用しなければならず、その期間中の対応を検討しておく必要がある。

(3) 無線通信補助設備の運用

デジタル化に伴い周波数が変わると、無線通信補助設備の設備変更が必要となる場合がある。消防法に基づくものにあっては、遡及が必要となり、法整備する必要がある。

(4) その他の無線局の運用

防災相互波、消防団専用波等は、デジタル化に併せて、同一通信方式に移行する必要があることから、防災関係機関等との調整が必要である。

【実施スケジュールの把握】

デジタル化を行う上で、関係省庁との折衝を行う基礎資料とするため、現在使用している無線機器の更新予定等について調査する必要がある。

本報告書は、平成一〇年五月の第五一回全国消防長会総会に諮られ了承されたことにより、デジタル化の実現に向けて、技術面や関係省庁の動向等をにらみ、いろいろな角度から更に踏み込んだ検討が行われていくものと思われます。

 

七 おわりに

自治省消防庁では、本年六月に消防・救急無線デジタル化検討委員会を立ち上げました。本年度は実験機を試作し、来年度はフィールド実験を行う計画ですが、特別研究委員会での二方式に対して各種の環境下での実験機によるテストを実施し通信方式を決定していく予定です。通信方式の決定は、全国の消防機関が全てこの方式により消防・救急無線のデジタル化を行うということで、全国消防長会のもとで慎重に対処していく必要があります。

また、デジタル化に伴う周波数の移行先についても、現在一五〇MHz帯及び四〇〇MHz帯にほとんど空き周波数がないことから今後郵政省の動きをはじめ関係省庁や他の無線ユーザ等の動向を注視する必要があります。

デジタル化は社会的な潮流であり、社会は高度情報化に向け目まぐるしく動いています。消防通信も時代に遅れることなく更に進展することを切望するものであります。

(加藤正博)

 

 

 

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