【通信方式の検討】
通信方式の検討は、平成一〇年六月の電気通信技術審議会答申「四〇〇MHz帯等を使用する業務用の陸上移動局等のデジタル・ナロー通信方式の技術的条件」(以下「電通技審答申」という。)を踏まえ、消防の使用形態や指令管制システムの機能条件を考慮して、消防・救急無線に最適な変調方式、アクセス方式について検討しました。
電通技審答申で示された複数のデジタル方式の中から、必要な機能条件、機器の開発及び標準化の動向等を踏まえ比較検討を行った結果、最終的に次の二つの通信方式に絞られました。本来は一方式に絞り込むべきでしたが、この二方式は、いずれも実用機レベルでの十分な検証が済んでいないことから、優劣を判断するだけの決定的な要素を見出すには至らなかったため、特別研究委員会では、二方式を併記することとしました。
特別研究委員会での研究結果については、平成一〇年三月に基本機能編を、九月に最終報告が取りまとめられ、一〇月の全国消防長会秋季役員会に報告されました。(別表2参照)
(注)
SCPC方式(Single Channel Per Carrier)
音声やデータ等の情報信号を伝送する各チャネルのそれぞれにひとつのキャリアを割り当てる方式
FDMA方式(Frequency Division Multiple Access)
SCPC方式に基づき、周波数分割により構成されたチャネルを各通信ごとに割当制御を行うことを特徴とするアクセス方式
電技審「400MHz帯等デジタル・ナロー通信方式委員会報告書」より
*変調とは?
電波を空間に放射するには、アンテナに高周波電流を流せばよいわけですが、これでは、ただ電波が発射されるだけです。電波を使って通信を行うためには、電波に人の声等の情報を「のせる」ことが必要になります。電波は、情報を搬送することから「搬送波」(キャリア)と呼び、搬送波に情報をのせることを「変調」といます。また、受け側では変調された搬送波から情報だけを取り出すこととなりますが、このことを復調といいます。
変調の方法としては、一般的に通信しようとする情報に応じて搬送波の振幅を変化させる振幅変調(AM)方式、搬送波の周波数を変化させる周波数変調(FM)方式、搬送波の位相を変化させる位相変調(PM)方式等がありますが、近年いろいろな変調方式が開発されています。現行の消防・救急無線のほとんどは周波数変調(FM)方式ですが、特別研究委員会で検討してきた、π/4シフトQPSKは直交位相変調、RZSSBは実数零点単側波帯変調と呼ばれる変調方式です。