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部下の育成が求められ、管理者自身の成長が求められる

〜部下を育成することは、管理者自身を開拓することです〜

 

今はパラダイム変化の時代ともいわれ、仕事を取り巻く環境も激変している。科学技術の進展は既存の知識や経験をたちまちのうちに陳腐化させてしまう。管理者は過去の経験だけにたよることなく、常に自己開拓を図ってもらいたいと思う。

この自己開拓という言葉は、自己啓発の上位概念の言葉であるが、自分自身の道の分野を自らの意思と努力で切り拓いていくという願いをこめた概念である。消防という組織に安住することなく、意欲的に管理者としての自己開拓を図っていってもらいたいと思う。

「啓発」「革新」「開拓」は語源的にはまったく異なっている。広辞苑によると、「啓発」とは知識を深めること。「革新」とは知識や習慣、方法を根本から変えること、「開拓」とは、新しい進路を発見することとなっている。したがって、「自己啓発」は個人としての知識の拡大であり、「自己革新」はひろく、ふかく、つづけて自己啓発し、自己の考え方、態度、行動を変革することによって、組織という職場を革新することといえる。「自己開拓」はさらに自己の新しい進路を求めて、パラダイム変化の中の多様化へ対応していくことである。ちなみに中国語では「開発」という言葉がもっとも「開拓」に近い言葉と言われている。中国語で「開発」とは、まったく何もないところがらはじめることであり、「開」とは門を開く、現状を把握する。「発」とは発見の発である。英語ではトランスフォーメーションこれは生物学用語で形質変化である。すなわち芋虫が蝶にがらりと姿を変えるということで、イノベーション以上のまったく質量の変化を求めて使いわけている。

 

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最近よくいわれているコンビテンシーは、能力・適正を示す概念で、高い成果に共通して見られる行動特性を、優れた業績をあげるために潜在能力や性格ではなく、行動レベルで発揮できる能力のことである。高い業績を生み出すためには、行動として安定的に発揮される能力等と定義されている。具体的には「マネジメント力」「行動力」「思考力」「影響力」「自己統制力」の五つがあげられている。

 

●管理者は、自らの考えを人を動かして実現する立場にある

管理者は組織におけるリーダーである。リーダーが所属する組織の目的を継続的に達成するために、当該リーダーが分担する組織単位の目標ないしは分担業務を、与えられた条件のもとで、人を動かして、効率良く達成することが求められる。

管理者としては、二つの機能の再認識が不可欠である。それは、仕事の側面と人の側面である。前者は、与えられた条件を十二分に活用し、組織から期待されている成果をあげ、よりよい質の仕事をよりヤスク成し遂げる目標(課題)達成機能であり、後者は、部下や後輩が当面の成果をあげるように指導し、さらに今後に向け、さらに部下や後輩の能力アップを図り、明るく、楽しい活力に満ちた、働き甲斐のある職場をつくる集団維持機能である。この目標達成機能と集団維持機能をバランスよく推し進めるのが管理職の重要な点といえる。

管理者は自分の考えを人を動かして実現する立場にあるとしたが、「自分の考え」とは、上位方針を翻訳し、指示目標をブレイクダウンし、自主目標を設定し、目標達成方法を示し、スケジュールを考察し、これを部下・後輩・同僚・上司とコンセンサスしなければならない。「実現する」とは、人を動かし、目標達成上の障害を乗り越える問題解決を図りつつ、さらには将来に向けての開拓を図りつつすなわち職場の活性化や人材育成、自己開拓に努めながら組織全体および各プロセスで管理のサイクル(プラン、ドウ、チェック、アクション)を回していくことが求められる。

 

 

 

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