専門能力はさらに固有の専門能力と共通の専門能力とを発揮していくことが求められる。特に共通の専門能力は、仕事をリードする専門能力と人をリードする専門能力とが必要である。前者は、管理力、問題解決力、課題解決力であり、後者は表現力、傾聴力、説得力である。
何をいまさらと思われるかもしれないが、「仕事」とは一体何かについて組織人すべてがしつかり把握しておくことも重要である。仕事と作業は異なる。仕事には収入以外の何かがあり、そこには成長、発展がある。作業にはそれがない。パラダイム変化の今求められているのは、「仕事人」である。仕事人は仕事の六つの性格をしっかり認識し、実行できている人である。
その仕事の六つの性格とは、以下のとおりである。
1]仕事に対する「目的」がある(要求される条件を知る、指示待ちではなく能動的に)
2]仕事には「納期」がある(期限の確認、間に合わない場合には、指示を求める、早めの連絡、了解を求める、チームプレーで「納期」を遵守する)
3]仕事には「コスト」がある(時間コスト、探索コスト、私用コスト)
4]仕事には「手順」がある(十分な準備、予測不安材料の事前チェック、効果的に仕事をこなす手順を考える、平行原理の導入)
5]仕事には「生産性」がある(時間の有効活用、努力の蓄積)
6]仕事には「報告」がある(相手の期待をつかむ、先手を打って報告する、タイミングよく、悪い報告ほどハヤク、事実と推測の峻別)である。
括弧内は要件である。
●管理者としての仕事のプライオリティ4分割
パラダイム変化の時代には、「仕事の手順」をしっかり押さえることのできる管理者でなければ生き残ることはできない。中でも重要度がカギである。緊急度はだれがみても緊急なことは共通認識できるが、重要度は人によって千差万別である。理由付けをしない限りどうでもよい仕事をしつづけることになりかねない。
緊急度と重要度は反比例の関係になることが多いといわれる。重要な仕事は貢献度は高いが、それだけ時間を要する。逆に、緊急の仕事は重要でない場合が多い。そのために、重要な仕事が知らず知らずのうちに後回しになり、気がついたときには本当に重要なことをなおざりにしていたということはよく経験することである。
管理者は、部下に権限を与えながらも、責任は全て自分が負う覚悟(自責化)が欠かせない。こうした管理者の下では、部下はその姿勢からやる気を刺激され、実力以上の力を発揮する。そのためには、まず管理者が次のことを明確に区別する必要がある。「何を自分でやるべきか」「何を部下に任せるか」これが重要である。
●人材育成と部下指導
管理者にとっては、「育成」と「指導」両方とも重要なファクターである。育成とは長期的視点に立って部下の将来を考え、そのあるべき姿を描き(イメージだけでもよい)その到達に向けて上司が部下に対して行う意図的、計画的、重点的、継続的な働きかけである。また、「指導」とは当面の自部門の目標達成のために上司が部下に対して行う課題志向的な働きかけであると同時に、当面の部下本人の目標達成のために上司が部下に対して行う支援的な働きかけである。
人材育成というとき、育成を広義に解釈した概念として捉えることができる。人材育成はすなわち能力開発といわれていることと同義語である。人材育成の方法には、本人による能力開発が自己啓発であり、上司による能力開発が部下指導であり、組織による能力開発の代表が集合研修である。その目的は、現在の職務遂行能力の向上であり、将来の職務遂行能力の向上であり、変化対応能力の向上を図ることにある。
では何故、管理者は人材育成、能力開発を行わねばならないのだろうか。
こうした考え方をパラダイム変化の時代には管理者がとり、部下の能力、適正を職場の中で十二分に発揮してもらうことが重要である。管理者自身の成長のためにも。
ここで、開拓と言う言葉を用いたが、今管理者に求められているのは自己啓発だけではない。自己改善、自己革新、自己開拓である。