美しき唄のまち。美唄の駅の看板にはこう書かれているが、美唄の名前はカラス貝をアイヌ語でピパイまたはピオパイと呼んだところからきている。昔、このあたりは沼地が多く、カラス貝が多かった。ここ美唄市は札幌から電車で約三〇分、石狩平野のほぼ中心、石狩川が市の西端に流れている。以前は、炭鉱のまちとして知られていたが、現在は農業を主体としたまちとなった。また、芸術文化のまちとしても知られている。舞踊家の花柳鳴介さんは、ロックバンド「聖飢魔II」と共演し、古典芸能とロックを融合させたイベントを毎年市内で行っており、彫刻家の安田侃さんは芸術文化交流施設アルテピアッツァ美唄に作品を提供し調和のとれた空間を演出している。
美唄を通過する国道一二号線の直線部分の距離は長さ二九・二?q、日本一長い直線道路である。今回取材した美唄市消防本部はこの直線道路に面している。当本部は昭和二五年に発足したが、消防の歴史はさらに古く、明治三六年に私設沼貝消防組が設立されていた。それ以後、組織、名称の変更等を経て現在に至っている。現在、一本部・一署・三分遣所・職員五四名と一団・一三分団・団員二八一名で防火防災の任にあたっている。
★ 福祉のまちとして
美唄市は、現在、福祉のまちとして安心して暮らせるまちづくりを推進している。消防もこの行政施策の一翼を担っており、最新の指令管制システムの導入や一人暮らし老人・身体の不自由な方に対する緊急通報装置の導入などを行った。
また、救命率の向上にも力を入れており、一月おきに応急救護講習を実施している。現在、約一、〇〇〇人の受講者を六、〇〇〇人にし、市民の五人に一人はバイスタンダーを目標にしている。
★ 一般住宅の立入り検査
当本部では、昭和二五年の発足当時から一般住宅の立入り検査を行っている。職員一人が年間一二〇〜一三〇軒を担当し、住宅防火診断等を行っている。現在、住宅防火の必要性が議論されており、独居老人家庭の住宅防火診断も実施していることから、当本部の施策は住民からも歓迎されている。
★ 手作りの物で火災予防PR
秋の火災予防運動では、幼年消防クラブと協力しパレードを行っている。クラブ員が法被を着て行進し、この時、職員手作りの品物を配布している。過去には、絵馬、纏の置物、りんご、カボチャなどを配布した。これらの配布物は配布を始めると、あっという間に無くなるほど好評だ。その年何を配布するか、どのように育てるか、いかに作成するかは、当本部の職員が考えている。
★ 地域の活性化にも貢献
平成六年、美唄市消防団キヤリ保存会を結成し、梯子、纏、太鼓といった演技を伝承させている。以前は職員が出初式で演技をしていたが、ケガ等が多く伝承者も少なくなっていた。そこで、伝統文化を後世に伝えるため、団と本部が協力し保存会を結成した。現在は、出初式の演技が好評を博し、一般のイベントにも出演している。このように活躍の場が広がったことにより、継承者も増え地域の活性化にも貢献している。現在は女性の梯子乗りも活躍している。