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ワンポイント

消防職員のための法令用語解説

 

地方分権推進計画(八)

 

九 地方公共団体の意見の申出と国の回答義務

 

(ア) 特定地域の振興計画等、特定の地方公共団体の行政に影響を与える施策を規定する法令には、当該施策の実施に当たり、関係地方公共団体の意見を聴取し、国が一定の期間内に回答をしなければならない旨の規定を置くものとする。

地域の実情や要望を考慮したものである。

(イ) 内閣は、地方公共団体の長又は議長の連合組織が、地方自治法二六三条の三第二項の規定により、内閣に意見を申し出たときは、当該意見について遅滞なく回答するよう努めるものとする。

また、内閣は、地方公共団体の長又は議長の連合組織が、地方公共団体に対し、新たな義務又は負担を義務づけると認められる国の施策に関し、地方自治法二六三条の三第二項の規定により、内閣に対し、意見を申し出たときは、当該意見について遅滞なく回答するものとする。

地方自治法二六三条の三の規定は、平成五年の地方自治法改正により設けられた規定で、国と地方公共団体との協力関係を推進するために、全国市長会等の地方公共団体の連合組織が、地方行政法令関係へ立法参加する道を開いた規定で、地方自治を一歩進めた規定である。

その内容は、地方公共団体の全国的連合組織が、地方自治に影響を及ぼす法令に対し、内閣に対し、意見を申し出、又は、国会に対して、意見書を提出することができるというものである。

今回の地方分権推進計画は、この規定の趣旨をさらに進めて、内閣の回答努力義務や一定の場合の内閣の回答義務を定めたものである。

国と地方公共団体との考え方の違いや、考え方は同じであっても、事業の実施時期をめぐる見解の相違等が、はっきりとすることになり、地方自治に関する住民の理解が、一層すすむことになろう。

 

一〇 国と地方公共団体との間の係争処理の仕組み

 

国と地方公共団体との協力関係により、行政を行う場合に、両者の間で係争を生ずることがある。

透明、公正な行政を推進していくという地方分権推進計画の考え方からいけば、両者の見解が文書で示されることにより、お互いの調整が図られていくことが望まれるところである。しかし、係争が解決しない場合には、何らかの方策をとる必要がある。

そこで、地方分権推進計画では、国と地方公共団体との間の係争処理機関として、総理府に国地方係争処理委員会(仮称)を設置して、同委員会の審査、勧告等により係争を処理することとしている。

それでも解決しないときは、裁判所に訴訟提起をし、機関訴訟として、判決により解決できることになっている。

 

全国消防長会

顧問弁護士  木下健治

 

 

 

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