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この大会でみんなで歌う“僕らはちびっこ消防隊”は、園でも家庭でも好評。先生方の話では、「『子どもが、家庭でもよくこの歌を歌っては、火の用心にうるさくなりました』とお母さんからお話がありますよ」とのことである。振り付けで歌うこの歌は、“防火の心”の育成に大変役だっている。

幼年消防クラブでは、特に「火の用心呼びかけ」に力を入れており、お揃いの法被と拍子木をたたきながら身近なところをまわっている。拍子木は、当防火委員会よりわずかずつではあるが、毎年、幼年・少年消防クラブに配布を行っている。

 

●少年消防クラブ

夏休み直後、一泊二日の日程で消防士体験学習を行っている。各クラブより代表者二人、計二六人で当本部会議室をベースキャンプとし、救急法、ロープ渡り、ショッピングセンターにおける消防用設備の見学等を日程に組み込んでいる。職員とともにカレーを作って食べたり、就寝中、救急車の出動に驚いたりして、消防への理解を肌で感じている様子。わずか二日間ではあるが、新しい友達と二度とできない消防の思い出を手にいれ、来たときに比べると、ちょっとだけ逞しくなって署を後にするクラブ員の後姿は、我々職員にとっても、疲れはあるものの何とも感傷的になってしまう。クラブ員全員にこのような体験の機会を与えることができるならば、クラブ員の防災意識の向上とともに、人間的成長に消防が少しでも寄与できるのではないかと思う。

 

●婦人防火クラブ

婦人防火クラブは、一五クラブ結成されている。年一回、当本部において、各クラブから代表三人が参加し、婦人防火教室を行っている。内容としては、救急法や家庭の防火対策、天ぷら油火災の実験、消火器取扱訓練等を組み込んでいる。

 

●その他の自主防災組織

自主防災組織は、現在、各市町村が主となり、結成の促進を図っているところである。

当管内の自主防災組織の中で、地道に実践している防災活動を一例紹介する。

砥用町原町区では、明治四三年からこれまで八八年間途切れることなく、区民輪番制による夜回りが続けられている。町がひっそりと眠りについている午前零時ごろ、拍子木をたたき、雨の日も雪の日も、防火の伝統を全区民で守り続けている。

 

これからの自主防災組織の育成

「三つ子の魂、百まで」とのことわざがあるように、幼児期における防火教育の強化に力を入れているところであるが、少年・婦人防火クラブの育成及び自主防災組織の結成がやや手薄となっている。これからは、各防火クラブはもちろん、地域別、職種別等、柔軟な組織の結成を図り、リーダーの育成、活動拠点等の環境整備、やりがいのある魅力的活動へと昇華していきたいものだ。

また、一〇消防団の約半数に女性消防隊が結成され、住宅防火診断や紙芝居等の予防活動を精力的に実施している。消防団、自主防災組織、消防職員、この三つの輪を有機的につなげていくことも今後の大きな課題である。

 

おわりに

当管内においても、少子化、一人暮らし老人の増加、核家族化、といった様々な社会的現象が宇城地域を飲み込んできている。青年団や婦人会組織は、消滅、または減少の一途をたどり、消防団もその例外ではない。人と人とのつながりが稀薄化してきている中だからこそ、消防が郷土作りの基本組織、求心組織として地域に根を張っていくことが必要だろう。

“災害に強い故郷作りは災害に強い人作りから”“災害弱者にやさしい消防”を基本理念とし、今後さらに、防火・防災コミュニティネットワークをつなげ広げていくよう、新たな取り組みが必要であると感じる。

(谷川英明)

 

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