日本財団 図書館


(六) 救助活動完了

二〇時〇三分

(七) 死傷者の状況

死亡 一名(六四歳男性、救助後死亡)

中等症 一名(三七歳男性)

軽症 二名(一九歳女性、四三歳女性)

(八) 出場車両・人員

救急隊(救急車) 二台六人

高規格救急隊(高規格救急車) 一台三人

救助隊(救助工作車) 一台四人

支援隊(タンク車) 一台四人

 

二 事故概要

事故発生場所は、伊香保町方面に向かって緩やかな上り坂の左カーブとなっており、小型乗用車がセンターラインをオーバーし、渋川市方面に下っていた対向車の大型路線バスに正面衝突をした。小型乗用車は、バスの運転席下部にいったん潜った後左側へはね飛ばされ、一回転して停車。運転手が運転席に閉じこめられた。

バスは、衝突の弾みでフロント部が跳ねて左側のガードレールに乗り上げたまま一〇m走行後落下、その後右に左に方向変換しながら暴走を続け、道路脇に設置された高さ一mのコンクリート擁壁に右側前輪及び後輪が乗り上げたまま、更に四〇m暴走し停車したもので、バスの運転手及び乗客が負傷した。

 

013-1.gif

 

三 現場到着時の状況

小型乗用車はフロント部分及び屋根部分が上から押し潰され、エンジン部分から水蒸気が吹き出し、運転席で腹部及び両下腿部が、ハンドル及びダッシュボードに挟まれ脱出不能の男性一名を確認した。

バス側では、フロントの運転席下部がえぐられ運転席の床が盛り上がり、運転手が頭部から出血、両足がクラッチ及びブレーキペダルの間に挟まれている状態を確認。また乗客四名のうち二名が軽傷を負っているのが確認された。

 

四 活動概要

先着救急隊は、事故の状況から小型乗用車からの救助には時間を要すと判断、指令室に医師要請を実施。続いて支援隊と協力し、バスの運転手を救出して救急車に収容、病院へ搬送した。

救助隊は小型乗用車から燃料及びオイル漏れが認められたため、消火器及び注水態勢を取るとともに、油圧スプレッターにより運転席側のドアを解放し、救急隊の活動スペースを確保した。

救出活動中、男性はCPAとなりCPRを開始。それと並行して救助隊はワイヤーで小型乗用車後部の牽引用フックにアンカーを取り、支援車に固定。更に小型乗用車のフロント側からハンドル部分にワイヤーを取り付け、救助工作車のウインチにより牽引、ハンドル及びダッシュボードを引き起こし、男性を救出した。直ちに高規格救急隊に引き渡し、救助隊は救助活動を完了した。

救助された男性は、残念ながら到着していた医師の診断により死亡と確認された。

第二救急隊は、大型路線バスの乗客二名を収容し病院へ搬送した。その後、道路上に漏れた燃料及びオイルに油吸着剤を散布して二次災害の防止を図った。

 

おわりに

今回の事故は、大型路線バスと小型乗用車の衝突事故であり、多数の負傷者が予想されたが、乗客が少なかったこと、また下り車線を走行中のバスの運転手が、衝突のショックで意識不明に陥り、バスが右に左に暴走し、ガードレール及びコンクリートの擁壁に乗り上げたにもかかわらず横転を免れ停止できたことは、不幸中の幸いであった。

現場は、伊香保温泉の手前五〇〇m付近で、対向二車線は、観光客や帰宅途中の通行車両が多い時間帯であり、大型路線バスの運転手が意識不明のままで下り坂を暴走していたならば、多重衝突事故など大惨事となる可能性が十分にあった。

このような悲惨な事故が再び起こらないことを祈ると共に、近づく二一世紀に向け、ますます大規模複雑化する各種災害に迅速・的確に対応するため、様々な条件を想定した訓練を実施し、地域の安全を確保できるよう職員一丸となって取り組んでいる。

(町田義雄)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION