日本財団 図書館


敷地には、広い範囲にわたって解体家屋材等の廃棄物が大量に野積みされており、強風の中これらや事務所、山へ延焼拡大のおそれがあった。

付近は、山あいであり消防水利は火点から遠い溜池のみである。一隊は、一人が小型動力ポンプを背負い、もう一人が六五ミリホース三本入った背負器を背負いながらポンプの介添えをし、さらに一人は吸管を持ってそれぞれ笹を踏み分け道路下の溜池へ向かった。その間、もう一隊はホースカーで登り坂にホースを延長し火点直近に部署した水槽付ポンプ車へ向かった。さらに、別隊も小型動力ポンプを溜池に部署し、中継準備をはじめた。それぞれの隊が途中で逆延長金具等を使用し、水利が遠い場所から、水槽付ポンプ車の水がなくなる前に中継送水隊形を整え、中継送水を行った。水槽付ポンプ車からは二線放水し、うち一線を途中で分岐し十字放水隊形をとり消火につとめた。消防団員も小型動力ポンプ数台を他の溜池に水利部署し、中継送水、解体家屋材への放水及び近くの山への延焼阻止につとめた。

このように各隊の迅速な連携で、瞬間風速が一五m位の強風の中、解体家屋材三〇m3とバックホウ一台を燃やしたのみで一八時三〇分に鎮火した。

なお消火に使用した水は、敷地内から流出はしなかった。

 

おわりに

本件の火災原因は、バックホウで家屋の解体材を焼却炉へ投入した時、高所から焼却物が落下したため舞い上がった火の粉が強風にあおられ飛散して、残っていた家屋の解体材の中へ落ちて出火したものである。

往々にして、このような産業廃棄物処理場では、解体材等は大量に山積みにされ、次の作業に便利な場所すなわち投入口の近くにも散乱して置かれていることが多い。

また、これらの施設は人目に付かない、概ね山間部の人通りの少ない場所を選んで建設される。したがって、消防水利面においても、不便なところにならざるを得ない。前述したように管理上のずさんな面も多々あることから、出火の危険性は大きく、また、一度出火すれば、種々雑多な大量の可燃物が集積してあることから消火困難な火災になる可能性が極めて高い。

一方では、近年、ダイオキシン問題等で一般家庭では廃材等を焼却できないため、廃棄物等の焼却施設の需要が多くなり、環境問題上同様な施設が全国各地でいろいろと取りざたされている。

幸いにして、本件火災は一時間足らずで消火でき、敷地外への消火用水の流出はなかったが、場所によっては有害物質を含んだ消火用水等の流出による河川等の水質汚染もあり得るため、消火作業には周辺環境に配慮した消火活動が必要になると思われる事例であった。

(原幸正)

 

救急・救助

「乗用車とバスの正面衝突」

渋川地区広域市町村圏振興整備組合消防本部(群馬)

 

はじめに

当消防本部は、群馬県のほぼ中央に位置し、渋川市・伊香保町・小野上村・子持村・赤城村・北橘村・吉岡町・榛東村の一市二町五村で構成されている。

地形は西に榛名山、北に子持山、小野子山、東に赤城山の各山麓が展開し、南に関東平野が開け、北に高く南に低い扇状地の様相を呈し、中心部に利根川及び吾妻川が流れている。

管内の面積は二八八・八六?q2で、人口は一一九、一二六人である。

消防体制は、一本部・一署・四分署、職員数一五〇人である。

ここで紹介する事例は、文豪徳冨蘆花の小説「不如帰」の舞台で知られる伊香保温泉の入り口で発生した小型乗用車と大型路線バスの正面衝突による救急・救助活動事例である。

 

一 事故発生日時等

(一) 発生日時

平成一一年三月一一日(木)

一九時二五分頃

(二) 発生場所

伊香保町伊香保地内

県道渋川・松井田線上

(三) 覚知時刻

一九時二九分

(四) 覚知内容

携帯電話による一一九番通報により「伊香保カントリー倶楽部入り口付近の県道上で、乗用車と大型バスの正面衝突事故です。乗用車の中に人が閉じ込められています。」

(五) 現場到着

一九時三八分

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION