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※霧が出やすい現場の地形

福島地方気象台によると、会津地方は盆地特有の地形で冷気がたまりやすく初冬から霧の発生が多く、中でも現場付近は霧の発生しやすいところだったとのことである。当日は事故の前夜から未明にかけて、会津地方を高気圧が覆ったため放射冷却現象が起きやすく霧の発生条件が整っており、さらに現場は近くに阿賀川、宮川が流れ、川の水蒸気を含んだ空気が冷やされて起きる「川霧」または「放射霧」が発生し現場周辺の霧が特に濃くなった可能性が高かったとのことである。

 

三 先着隊の現場到着時の状況

出動から磐越自動車道会津坂下ICまで七?qで、事故現場はそこから会津若松方面へ戻ってきて約一〇?qのところである。現場近くになるに従って、付近一帯は濃霧に包まれ、視界は約二〇mという状況であり、まだ夜が明けきれず薄暗かった。

事故状況を確認するため高速上り線を進行すると、最後尾の大型トラックは前の大型トラックに追突、その運転手は、座席とハンドルに腹部と右足下腿部が挟まれた状態で痛みを訴えていたが意識は清明であった。前のトラックは、さらに乗用車に追突し、乗用車の運転手は、その前の大型トラックに追突し後車トラックのバンパー部が乗用車の運転席後部まで乗り上げている状態の中でハンドルの下に位置し脱出不能でCPAの状態であった。さらに二台の事故に遭遇しない無傷のトラックを確認しつつ進行すると、大型トラックに高速バスが追突しており、バスの一〇数人の乗客中二〜三人が打撲程度の負傷であることを、運転手等から確認した。さらにその前方では、ワゴン車が大型トラックに追突し、ワゴン車の運転手は、座席とダッシュパネル及びハンドルに腹部・右大腿部が挟まれていて激痛を訴えていたが意識清明であった。さらに見分進行すると、四tトラックの運転手は座席とハンドル・ダッシュパネル等に右足が挟まれ激痛を訴えていたが意識清明であった。さらに大型トラックの運転手は、トラック全部が前の大型トラックの後部(中央部)に食い込んでいると同時にドラックホイラーが運転席に落下し全身が押しつぶされCAPの状態であった。さらに進行すると大型トラックが横態で道路を塞いでいたので、ガードロープをくぐり最先端の状況を見分すると、大型トラックがガードロープに追突して、運転手は座席とハンドル・ダッシュパネルに挟まれて頭部に痛みを訴えていたが意識清明であった。

この活動現場は、大型車両一三台と乗用車三台の多重追突事故であり、要救助者救出に時間を要することと、自己隊のみでの対応が不可能であることから、消防隊のさらなる増強とドクターカー等の出動を要請した。

 

四 活動概要

現場到着と同時に事故の規模範囲の確認と死傷者確認によるトリアージを実施し、会津坂下消防署隊は第四事故現場から後着隊である会津若松消防署隊は、第一現場からそれぞれ救出救助活動に入った。

第四事故現場は、乗用車が大型トラックに追突され、大型トラックのフロント部が乗用車の運転席後ろまで食い込んでいたため、隊員二人が油圧スプレッダー等を使って男一人を救出した。さらに坂下署隊二人で第二現場でワゴン車が大型トラックに食い込んでいたため、ウインチを使ってワゴン車を牽引してトラックから引き離した後、フロント部を人力で引き離して男一人を救出した。さらに第四現場に移動して油圧スプレッダーを使ってトラックの運転席のドアを開放して、男性一人を救出して救急車に収容した。

一方第二現場では、大型トラックから油圧スプレッダー及び油圧カッターを使って運転席ドアを開放して一人を救出した。それから第三現場のトラックに移り、油圧カッターでハンドルを切断したが、要救助者の両足が車両に挟まれ救出スペースが無かったため、トラックで牽引し車両を引き離し、油圧スプレッダー及び油圧カッターを使って運転席ドアを開放して一人を救出した。そして、それぞれ救急車に収容した。

なお、第一現場の乗用車に大型トラックが追突した事故は、要救助者が発生しなかった事故であった。

 

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福島民法社提供

 

あとがき

平成二年一〇月一部供用開始(郡山JCT〜会津IC)以来全線開通に至るまで、部分開通による高速救急救助訓練を重ねていたものの、事故現場が最悪気象下と広範囲であったことは、消防隊活動の一元化を阻害するものであり、情報収集に時間を要したものと思われる事例であった。また追突事故と車両火災が併発しなかったことと毒劇物等運搬車両が遭遇しなかったことが大きく活動隊に幸いしていたと考えられる。

この活動事例により、今後の活動指針として以下のように記述したので参考にしていただければ幸いです。

1]車両からの燃料漏れが何カ所かあったが幸いにして軽油であり、出火まで至らなかったが、放水状態の中で救助活動できる出動編成とすること。

2]高速道路災害についても災害場所によっては、平面的攻撃から立体的攻撃を常に計画に取り入れて活動すべきであり、非常備消防隊の応援も考えておくべきである。

3]高速自動車道路での上下二車線区間の事故は、大型トラック等で上下線とも塞がれているという前提の元で活動進入すること。

4]通行車両数にもよるが特に後着隊は、現場に進入した後続車両により現場から程遠い所に部署しなければならなくなるので、ICで安全を確認のうえ高速道路逆行進入も考慮すること。

5]ドクターカー出場要請により医師が来場したので、現場でのトリアージの活用でスムースな救急活動ができた。

(野崎幸一郎)

 

 

 

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