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混迷するニュージーランドの消防

ニュージーランドの消防は国家消防制度を採用しているが、有給消防隊員(消防職員)の数はわずか一五%で、八五%は義勇消防隊員である。

数年前から消防制度の改革が行われており、その成否の行方が国内はもとより国際的にも関心の的となっている。国において消防の近代化計画が策定されて、一九九七年に新たに消防委員会が設置された。

従来消防業務といえば消火活動がほとんど大部分であって、これに勤務時間の大半が費やされており、火災予防業務は行われていない。消防訓練も余り行われないために、消防隊員及び義勇消防隊員の消防技術は遅れている。

消防装備も多くが古くてほとんどメンテナンスが行われておらず急速に性能が落ちているが、予算が不足していて事態を収集することができない。消防はまた、大規模な事業所の自衛消防隊にも依存しているが、事業所内では自衛消防隊員の消防協力に関して労使がもめている。

消防隊の出動体制は、第二次大戦中に英国が開発した出動体制をいまだに踏襲している。そして、消防隊員の保健と安全管理が不十分なために、隊員の事故が多発している。また多数の民間人の死傷者を出す大規模な火災も多数発生している。

消防委員会は、このような状況を速やかに改善し、消防の近代化を図るために設立された特別委員会である。同委員会は、1] 火災を予防して火災による人命と財産の損害を軽減する、2] 消防組織を改革して消防業務の効果を高め、国民から信頼される消防機関を確立する、3] 火災危険を除去し、市民指導及び火災予防活動を強力に推進することによって火災損害を軽減する。

消防委員会は、すでに多くの消防車両の乗車人員を四人から三人に切り替えている。

そして、消防職員の不満を解消するために全員を一旦解雇して、再雇用するという方法をとった。消防職員は、以前よりはるかに悪い勤務条件を了承の上で再就職の申請をして一般の就職希望者と一緒に採用試験を受けて、合格しなければならない。

このようにして一九九五年には約一、九〇〇人いた消防職員が現在では一、六七〇人に減少している。そして、このたびの消防近代化計画によりさらに一、二五〇人にカットされる予定である。消防隊員は、このたびの消防改革における計画段階において全く無視されており、消防の伝統的な団結心を失って、モラルは最低に達している。

消防委員会は、国民の身体と財産を防護するためにはどうしても消防の改革が必要であるといっているが、一般の人々はこんなに消防隊員の数を減らして、果たして国民の安全が護れるのだろうかと心配している。

なお、この件に関しては現在係争中である。

(文責 大野春雄)

 

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