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写真No.10

 

従って、泳力に欠ける要救助者に対しても簡単にホース竿を差し伸べることができ、救命浮環の投てき失敗や要救助者までの距離等を考慮すると投てき浮環と比較しても実用効果が非常に大であることが十分に証明されており、要救助者が海上、河川、運河、湖沼、池等で発生した場合に災害用ゴムボートに消防ホース、空気ボンベ及びエアーソー用調整機と空気注入用アタッチメントを積載することで、機動的な初動の救助体制が確保できることとなる。

また、災害用ゴムボートを保有していない消防本部でも消防車に積載しているホースと空気ボンベを活用することで陸上からの救助が可能なことから全国すべての消防機関において本活用法を用いることにより水陸両サイドから迅速、効果的な救助活動が実施できることとなる。

さらに、多数の要救助者が発生した場合でも、同時連続的にホース竿を投入することで消防機関の迅速・的確な初動措置が確保できるものである。

他方、ホースリングも、ホース本数を増加することで、救助エリアが拡大し効率的な救助活動に資するものであることから、ホース竿及びホースリングは今後、消防機関の救助活動に取り入れられる現実性を帯びた活用方法と思料する。

なお、消防艇積載のオイルフェンスを活用した大型代用救命浮環については、既に実施済みである。

 

三 簡易救命筏としての活用

ホース竿及びホースリングは消防ホースの直線救命浮環としての活用方法であるが、ホース筏は線上から面状へ転換した活用方法である。しかも、注入空気逓減試験のデーターから、陸上計測筏は空気注入後二四時間経過後も注入時圧力の五〇%以上のホース内圧を、海上計測筏は空気注入後二四時間経過後も二八%の注入時圧力を保持しており、海上での実用試験における要救助者の乗り組み状況から、救命筏として十分な浮力のあることが実証されたもので、ホース竿に次いで実効果のある消防用ホースの活用方法である。

なお、注入圧力は、上記ホース竿と同様七kgf/cm2が最適であると思料される。又、ホース筏の上にサルベージシートを展張することで婦女子や幼児等に安心感を持たせるとともに、下面からの浸水低減に活用でき、空気ボンベを含めた現有資器材の効果的な活用が実証されている。

さらに、作成が容易、短時間で作成できるホース筏として、「とびぐち」や「ちんちょう棒」を利用した筏がある。

 

四 大量送水システム用ホースの代用オイルフェンスの活用について

大口径ホースヘの空気注入タイムは、陸上・海上とほぼ同一タイムであり、二本並列ホースと直列ホースヘの空気注入が共に三分以内で完了している。

しかも、延長ホースが海面の波動に連れて動くことから、実用に際しての海象や気象等の影響を考慮に入れても、大口径ホースの口径分の海面高さ約一五〇mmから三〇〇mmを保持できるため、油流出時の代用オイルフェンスとして、十分活用できることが実証された。

ところで、ホース一本六八kgfの重量と四〇mの長さを考慮すると水面上への投入準備に多少の手間がかかるものの、特に河川上流等の内水面での油流出対応として、オイルフェンスを常時配備していない消防機関においても、危害排除の初動措置としては十分効果がある活用方法である。

又、小型救助艇によるリング状フェンスの作成タイムが三分一〇秒であったこと、及び大口径ホース二本直列時には直径約二五mのエリア内を囲めることから、海上・河川でのスポット対応、及び河川上・中流からの下流若しくは河口への流出防止に役立つ活用方法である。

なお、本システムを導入していない消防機関においては、現有消防ホースに空気を注入して廃物利用による簡易ゴムバンド等を活用して重ね合わせることにより、代用オイルフェンスとしても活用できるものと思料する。

 

 

第四章 まとめ

 

以上の各種試験及びその結果考察を通じて、「消防用ホースを活用しての空気注入による水面上延長とその多目的な応用活用について」という本論のテーマ通り、消防用ホースの多目的な応用活用が図られ、しかも、その活用方法が全国のあらゆる消防機関においても実際に活用できることを実証することができたものと思料する。

さらに、本試験及び考察が、消防隊の迅速・的確な活動範囲の大幅な拡大、及び消防艇等の広範囲にわたる効率的、かつ、多目的利用、並びに消防作業の省力化に大いに寄与するものと思料する。

 

 

 

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