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伸長状況については、三本並列時に注入した海水が錘となり空気が浮子になる、いわゆる「起き上がり子法師」状の様にスムーズな延長はできなかったが、三本を「逆俵状」(*参照)にして同時に海水と空気を注入した場合は、「逆俵状」ホースが相互に作用して海面を隙間なく覆い、帯状幅も三〇〇mmとなった。(写真8参照)

さらに、海上、河川等でスポット的に油流出が発生した場合に、その箇所を囲い込み、中和処理作業を実施する場合を想定し、小型救助艇(モーターボート)による大口径ホース二本直列型環状オイルフェンスを作成したところ、展張は三分一〇秒で完了した。(写真No.9参照)

 

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写真No.9

 

第三章 試験結果の考察

 

一 消防艇接岸不能地域等における効果的なホース延長について、消防艇から海上にホースを投入し、消防隊が現有している一五〇型空気ボンベ又は消防艇積載のコンプレッサーを活用して空気を注入することで、海上を這わせるようにホースを延長し沿岸目的地点に到達させた後送水を行うことを目的として試験したところ、6Lボンベでは最大七本、8Lボンベでは最大一〇本まで空気注入ができ、又、これ以上のホース延長を実施する場合には、コンプレッサーによる継続注入を行うことによりボンベ交換が不要となり、より効率的なホース延長を行えることが判明した。

注入完了時間は、陸上と海上で差が生じているが、これは、消防ホースを消防艇から海上に投入した時のジャバラ折れ部分による注入圧力の損失が発生したためと解される。又、海上においても、陸上と同様にボンベ容量に応じた比例を成さない部分が生じたが、これは船上から海上にホースを投入した際の「ホースの折れ」による空気注入圧力の損失の差が原因と解される。

しかし、6Lボンベによる注入圧力五kgf/cm2の場合、ジャバラ折りホース七本以内の空気注入完了まで一〇七秒と二分以内であることから、船上からのホース延長はジャバラ折りが適しているとともに、ホース延長本数が六本以上となる場合には、継続注入できる消防艇のコンプレッサーの方が優れていることが判明した。

なお、海上延長時に方向性を持たせるには、延長ホースの先端に注入空気を噴射させるヘッドバルブを取り付けるとともに、消防艇の甲板通路上に事前にホースを延ばしておき、空気注入後海上投下し、方向調整を行うことでより円滑なホース延長が実施できた。

さらに、海上延長実施時において、送水後もホースが水没しないことから、延長ホースの中間地点における浮環等の浮力取り付けが不要となり、海底の沈殿物、堆積物等に接触しないためホース延長及び収容作業時において、作業の省力化、効率化、及び迅速化を実現できる延長方法であることが実証された。

しかも、波風の影響を受けない状況下においては、消防ホース八本、延長距離にして約一三〇m〜一五〇mまでは誤差三〇mの範囲で対岸まで延長できていることから、救命索発射銃の到達距離を越えたホース延長であっても、消防艇から対岸へのリードロープやメインロープの展張作業等を省略することができ警防活動の効率化が図られる。

以上の考察から、消防ホースに空気を注入して対岸へ延長するという消防ホースの活用法は、現有資器材を効果的に活用するもので実活用面においても一般災害や震災時等の消防艇の効果的運用と隊員の省力化に寄与するものであると思料する。

 

二 簡易救命浮環としての活用

消防ホース内に空気を注入すると直線三本までは、6Lボンベで注入圧力七kgf/cm2時にわずか一〇秒であり、一本だけでは、同注入圧力でわずか四秒〜五秒しかかからない事が実証されている。また、筏の注入空気逓減試験から、二四時間経過後もホース内の圧力が最低でも注入時の二八%以上保持されており、十分な浮力を有していることも実証されていることから、注入圧力は、七kgf/cm2が最適であると思料される。

さらに、ホース竿一本で最低でも大人五名の要救助者に対する救命浮環として有効であり、かつ、長さ約三〇m、消防用ホース一本半までは方向性を調整できることから、投てき救命具と比較すると要助者まで確実に伸長できるというメリットに加えて、船上からだけでなく、写真No.10に示すように陸上側からも消防隊保有の一五〇型空気呼吸器のボンベを活用することで、簡単・迅速に要救助者を救助できることが証明された。

 

 

 

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