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設立2周年記念講演会

 

広島犯罪被害者・心の支援センターは設立2周年を迎えました。それを記念して最近、多発している「性犯罪」について講演会を開催しました。

被害をうけた人は身体も心も傷つきます。その心の傷は周囲の者が考えているより、はるかに深く大きな傷です。今回の講師は板谷利加子氏で神奈川県警察本部で「性犯罪捜査係長」として主に性犯罪の被害者支援にあたっておられます。皆様、ご存じのように被害者支援の実際を「御直披」という本にまとめておられます。今回は「性犯罪捜査の現場から」というタイトルで、これまでのご自分の経験に基づいた貴重なお話をされました。

講演会の7月2日はあいにくの雨降りでしたが、会場の県民文化ホールにはたくさんの人が来場され、講師の熱心な話と、ビデオの映像にくぎづけになりました。

 

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講演中の板谷利加子氏

 

ボランティアのつぶやき 8]

 

支援する人のための支援? 面接相談員 T.S.

臨床心理士として常日頃、クライエントからの相談を受ける仕事をしていると、ときにこちら側が悩みを抱えることになってしまう。一番多いのは自分の対応がクライエントのためによかったかどうなのかということだが、それと同じぐらい多いのはクライエントの様々な感情に聞いているこちら側まで染まってしまうことである。たとえば精神療法の場面で、ひどく落ち込んだ(抑うつ的な)クライエントの話を小1時間も聞いていると、セッションが終わってもしばらくはこちらも重い気持ちを引きずることになる。あるときはクライエントの怒りだったり、あるいは悲しみだったり、さらに、そんな風にクライエントに揺さぶられている自分の姿に気がつくとますます落ち込んでしまい、事態は泥沼化の様相を呈してしまう。これはわたしの心理士としての経験不足によるものかと考えてみたりもするが、精神療法の分野で「逆転移」という言葉がこれだけもてはやされている状況をみると、必ずしもわたしの個人的な要因だけでもないような気がする。

スーパービジョン(経験の豊かな精神療法家に、自分の行った精神療法を指導してもらうこと)や事例検討会で、自分とクライエントとの関わり方を振り返ることも多い。そういう方法で技術的な問題を解決していくのも大切だが、それと同じぐらい大切なのは、飲みに行く(遊びに行く・唄いに行くでももちろん可)ことである。いわゆる「気分転換」を上手にできることが、こういう仕事をするときには一番大切なことだと思う。これは仲間がいればいるほどいいし、別のグループがあればあるほどいい。犯罪被害者の支援についてこれまで幾度となく研修を受けたが、そこで何度も「相談員の側が一人でしんどさを抱えない」ということを聞いたような気がする。相談の当番でセンターに行った時、面接の予約がなければ面接相談員はすることがないのだが、電話相談員の方々と少しでもお話をして気分転換のお役に立てればと思う。支援者への支援がなくては、被害者の支援は成り立たないのではないだろうか?

 

 

 

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