日本財団 図書館


「被害者対策のために-

刑事手続きと被害者及び弁護士とのかかわりについて」

平成11年8月11日(水) 午後7時

講師 山崎法律事務所 下中弁護士

 

日頃、被害者の相談を受ける身にとって、事件や被害者が被った心身のダメージを聴くことができたとしても(これもかなり難しいことですが)、被害者を取り巻く現実、特に法的にどのように対処されていくのかが、今まではほとんどわかりませんでした。このたび、性的犯罪の刑事手続きをフローチャートに図式化し、お話して下さったことにより、被害者を取り巻く状況が予想以上に厳しいものであることが認識できました。事件に巻き込まれることだけでも大変なことなのに、それに伴う捜査や刑事手続き上のやりとりが、セカンド・レイプとなり、さらに被害者を困難な状況に追い込む可能性があるということです。漠然としていた被害者の立場が鮮明なものとしてとらえられたような気がしています。

その他、弁護士の依頼の仕方、報酬などの具体的な資料等の提示もあり、被害者の経済的な負担について、一部知ることができました。

なお、今後の課題としてあげられたのは、次の通りです。

1 犯罪被害者基本法の制定

2 運用改善

(1) 被害者保護

取材、報道規制

捜査方法

報復防止措置

(2) 被害者への情報開示

犯人の身柄関係、被疑事実の概要、処分結果及び理由、公判日程、公判状況、判決、服役後の出所時期・居住地等

(3) 刑事記録の開示

民事の損害賠償請求のために

(4) 犯人との和解

和解プログラム制度の検討、実施

刑事弁護人のモラル

(5) 弁護士会による組織的対応

常設相談窓口設置・弁護士派遣制度・カウンセリング機関、支援団体の紹介

(6) 弁護士会と関連支援機関とのネットワーク形成

 

003-1.gif

 

お話からは、下中弁護士の誠実なお人柄がしのばれ、特に「被疑者の人権を重視するあまり、被害者の対策がなおざりにされている現状である」という言葉が大変印象に残りました。複雑な刑事手続き等を短時間でとてもわかりやすくお話してくださったことが何よりも嬉しく、またこのようなお話を聞けたことをとても幸運だと感じました。

下中弁護士に心より感謝します。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION