発注者は、熊本県(8・9年度)および阿蘇広域行政事務組合である。この事務組合は、すでに見たように、阿蘇郡の12町村、つまり当デザインセンターの出資町村からなる、福祉や生活関連の業務を行なう組合である。
これらの事業は名称こそ違え、「冬の阿蘇」をアピールし、「冬の阿蘇」に人々を招き寄せる狙いで一貫しているだけでなく、いわば順を踏んで展開されている。
まず、8年度は「冬の阿蘇」事業の立ち上げの年である。8年度には、その事業名称が示すように、阿蘇国際高原リゾート基本計画が検討される中で、先行的・実験的な事業として「実験/冬の阿蘇を創ろう!」が取り組まれた。まず、その実施主体の組織化がなされる。民間企業・観光協会・旅館組合・地域づくり団体等との協議・ヒヤリングの後に、民間の組織や個人を中心に『実験/冬の阿蘇を創ろう』の実行委員会が結成され、行政サイドもそれに加わった。実行委員会の下にいくつかの事業が試験的に実施されたが、その主な事業は、「冬の阿蘇を楽しむ!草原の兎追い」と、「冬の阿蘇を創ろうシンポジウム」である。
「草原の兎追い」は、「冬の阿蘇の山野を共に駆け巡り、阿蘇の冬の魅力を体験し、都市との交流を図る」(8年度事業報告書)ことをテーマに、民間の牧場や旅館組合・牧野組合の協力を得て実施された。県内外から約200名の一般客の参加を得た。この「草原の兎追い」は、その後定番的な行事となり、発展をみせている。また、「シンポジウム」では、地元の日本国際童謡館(久野木村)の協力を得て、魅力ある「冬の阿蘇」の創造に向けての講演・討論が行われた。
9年度には8年度の実験的事業を踏まえ、「冬の阿蘇」を前面に打ち出した受託事業となり、その内容も新たな展開をみせた。
1つは、「草原の兎追い」である。名称・表現を「大草原のうさぎ追い」と手直しし、3回・3町村で行われた。主催団体として「冬の阿蘇を創ろう実行委員会」の他に、阿蘇町開湯100年ルネッサンス実行委員会、阿蘇温泉観光旅館組合、九州ツーリズム大学などが加わっている。兎追いの後に温泉や食を楽しむ内容となった。参加者数はマスコミの報道もあって、470名にのぼった。
2つ目は、「冬の阿蘇を創ろうフェスタ&フォーラム」である。これは、冬の阿蘇を創ろう実行委員会の主催で、日本国際童謡館を主会場として実施された。冬の阿蘇をテーマとした講演・パネルディスカッションが行なわれた他、主会場までの鉄道・バスの利用、名所の案内、地元特産のワイン・チーズ等の「食文化」を味わう試みなどもなされた。参加者は約150名を数えた。
その他に、9年度の「冬の阿蘇を創ろう運動」受託事業として、ジャズコンサート・女性フォーラムの「文化創業事業」、イメージキャラクター・ロゴの作成やキャラバン宣伝活動などの「冬の阿蘇広報宣伝事業」も実施された。