ダム造成のための工事用道路はもとより、3町のネットワーク化を促すための道路づくりには、道路の法面、斜面はできるだけ植生復元を図る、ダム湖に流入する前に河川の水質浄化を図るためヨシやマコモなどを人為的に植える、といった、土木工事に関連する環境保全対策は、ダムの造成が進む過程で生かされて行くことだろう。
しかしダム流域をキャンパスに見立てて構造物を展示するというアースワークの運動は、まだサマーキャンプやワークショップなどで試みられているにとどまり、本格的な展開は今後にゆだねられている。そこに期待と不安もある。
端的にいって高水敷などに展示される現代アートがどこまで理解されるものになるか、である。現代アートの作品を町内の住宅に展示する作品ホームステイといった試み、年間のスクール化を目指しているサマースクールへの住民参加、あるいは各種媒体による広報活動などは、難解な現代アートを理解するための教育的な役割を果たしており、関係者の努力には頭の下がる思いがする。伝統的な芸術とちがい現代アートが環境芸術としての実績を積んで来たことは既述した通りだが、その意図するところと実際の作品の与える芸術的なインパクトとは必ずしも同じでない。現代アートそのものに対する評価もさまざまである。おそらくわが国でははじめての試みである灰塚ダムのアースワークに期待すればするほど、芸術的と称する構造物が環境にマッチするものであってほしいと願うばかりである。そういう一抹の不安を抱きながら、ダム完成時に出現するであろう、斬新な環境芸術公園の光景に思いをはせている。