これに対して吉舎町は、町域の東北部を流れる上下川が水没するが、町の主要部は山をへだてた西南部、馬洗川の流域にあり、ダム建設と直接的な関わりが少ない。その点他の2町とは温度差が異なるようだ。当町分としては「雑草ゴルフ場」が計画されている。水質汚染をもたらさないための雑草ゴルフ場であるが、ゴルフ場という発想がこんにち的ではないようだ。
3町のなかでいちばん深刻な立場にあるのが総領町である。町は田総川の流域に開けたが、その下流域がダムの用地として取り込まれてしまう。かつての住居や田んぼの跡地は雑草の繁る河川敷となっているが、ダムができてもこれらが水没するわけではない―いっときを除いて。
というのは、灰塚ダムの最大満水位は247.3mであるが、常時満水位は231.2mで16mの差がある。完成のあかつきには実験的に全域湛水がなされるが、一ヶ月のちには常時満水位に戻される。したがってその後は100年に一度の大洪水でもない限り、16m差で広大な高水敷が常時存在することになるわけだ。したがってそのままでは、広大な高水敷は無用の荒廃地として放置され、環境の美観が損なわれてしまう。
そこで出て来たのが、その広大な高水敷を利用するアースワーク構想であり、3町全域を対象とはするが、総領町が中心になって進めて来た。