日本財団 図書館


小出郷文化会館をめぐる住民と行政の意識のズレと確執は、行政側の“住民”認識の甘さから始まったようだ。行政は、会館の建設構想について、住民参加の建て前から住民との懇談会の場を設けたが、それは行政側がすでに決めた計画を“アリバイ”的に説明するものだったらしい。住民参加の形がい化だと怒った住民側は関係団体が結束して反発し、「会館が出来ても使わない」という“絶縁状”を突きつける一幕もあるなど、両者の関係は険悪となり、一時は緊迫状態になった。

結局、基本計画から住民参加でやり直し、曲折を経て会館建設と運営の基本方向が固まった。館長の人選も、行政OBではダメという住民側の主張で難航したが、民間人の館長で決着。しかも、その館長が好評で会館の管理運営が軌道に乗ったのもよかった。住民と行政の協働関係が生まれた。確執があり、それを乗り越えたことが、かえって“雨降って地固まる”の結果になった。住民も行政も粘り強く、よくやった、と評価できると思う。

小出郷における住民と行政の協働の経緯は他の広域圏における住民行政のあり方を考える上で貴重な事例として注目していいだろう。今後、行政が指導性を含めてどう英知を発揮していくか。また、住民が行政との協働の中で、真の住民自治へ向けてさらに成熟していけるかどうか、極めて興味深い。

(2) 今後は、会館の広域的、効率的な管理運営が課題となる。特に、文化庁補助金(年間2000万円)が平成12年限りで打ち切りとなる。この穴をどう埋めるかが大きい課題。住民ニーズ充足のために事業の一層の充実も求められる。国、県の支援と地元の自助努力、特に応援団づくりも課題になるだろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION