5 成果
文化会館活動の成果としては、まず、舞台芸術に接する機会のなかった圏域住民に一流の芸術文化を提供することが出来たことが挙げられる。また、子供たちの感性を磨く場として、多くの子供たちの練習と鑑賞、発表の場となった。子供たちが日常的(例えば、学校訪問コンサート、羽田健太郎コンサート等)に接することで、文化、芸術に対する意識(目の輝き)が変わってきた。セミナー等を積み重ねていく中で、会館をフランチャイズとする広域の団体が誕生し活動している。広域的な文化協会の設置など、住民の活動に広域連携が図られてきた。
また、直接的な成果のほか、次のような波及効果もあった。会館の利用者による宿泊、弁当などの経済効果。大きな催し時の近隣の飲食店のにぎわい。民間館長、文化を育む会など住民がかかわる文化会館として全国的に知名度がアップした。視察者が多く来館し、それに伴う経済効果もあった館長には全国から多くの講演依頼があったという。
6 コメント
(1) 過疎地域の人々が自分たちの地域に誇りと自信を持つために大切な文化環境づくりには、その拠点となる文化施設を持つことが極めて有効である。単独の町村では、財源や利用者数の確保などの面から難しいので、小出郷地域では広域圏として対応し、堂々たる文化会館をつくり上げた。しかも、住民参加、住民と行政の協働で存在感のある会館づくりを成し遂げたことは、高く評価されよう。
広域連携によるこの種の施設建設は、なかなか難しい。小出郷文化会館はその典型例として教訓的だ。中でも特記すべきなのは、住民と行政の意識のズレから生じた確執があり、それをクリアしたことである。最近は、住民参加の流れが全国的に広がっている。住民参加の地域づくりはさまざまな難しい問題を抱えているが、とりわけ広域連携の場合は、住民と行政の関係に単独町村とは違った複雑な絡みがある。行政が住民参加への対応を軽く考えると、話がこじれてつまずくことも多い。最近の住民の資質レベルは、一般に考えられている以上に、成熟度は高い。甘く考えると泥沼にはまることになりかねない。小出郷文化会館の建設と管理運営をめぐる住民と行政の確執は、その意味で教訓的だと思う。地域の今後を考える上でも、この確執は地域の貴重な財産となったはずである。確執は、住民も行政もお互いに地域を愛する心のある証拠でもある。むしろ、確執を越えたところに、より成熟した協働の可能性があると考えたい。