これも迫り、あるいはスライドの問題になりますが、釘一本のこわさということですが、これは私が、グローブ座にいる時のことです。防火シャッターの下半分が迫り構造になっていて床が迫り上がる非常に重量のある巨大なる構築物でした。全部重い鉄でできている構造です。この重量のある床がある時起動させた途端突然に『ガーン!』と、ものすごい音で傾いて止まってしまった。小屋を休んで業者に来てもらい大修理しました。原因は何かと調べたら迫りが油圧式になっているのですが、この油圧シャフトの間に迫りとの隙間から落ちた釘が一本はさまっていた、それが原因だったのです。だから、舞台を清掃する時は、絶対に迫りと舞台の隙間をさけて清掃することが大事です。これは、舞台を守る側の常識なのです。
6)【情報伝達の重要性】
情報伝達経路の未整理の為、事故が発生した事がありました。「八代英太」さんの事故です。伝達すべき情報がきちんと伝達されなかった。しかも、受けての方も整理された形で受け渡しがされなかった。降ろすべきではない時に迫りが降りた為に八代さんは、後ろにさがって落ちて重度のけがをした。結果的にプロダクションとホール両方に責任が問われています。
現場をとりしきるのは、舞台監督です。照明、音響、大道具のプランナーがいるわけです。これを取りまとめるのは、舞台監督の責任です。打ち合わせを正確にしないといけない。それを舞台監督が握っているわけです。会館側にもまとめ役が一人いた方がいいのです。当日受けた人と本番受けた人が違うと大変危険なことです。人が変わる場合は、正確に情報伝達しないと事故が起きないほうがおかしいのです。要するに、情報伝達経路をはっきりしておく事です。できるだけ厳密に打ち合せをして把握しなければならない。そういうことは管理する側も念を押して受け取る情報はもらう事。これは原則不可能ではなく、安全に協力して舞台効果をあげられるよう情報をくださいということです。
7)【組織の二重構造の問題】
二重構造とは、出向職員と専門職員による組織構成で、出向の方は専門的な事はあまり口をはさめない。本当はやはり管理する側としては専門職とまではいかなくても、かなりの知識を持って言いたいことや運営的な基本的方針を理解してもらい現場が動き易い事が理想だと思います。これは今後の研究の課題ですがそういう形態の中でいかにスムーズに思うように運営していくか、日々現場の人達はどこが不都合か、どこに危険性があるか、ではどう直したらいいか。しかし、直すには金がかかります。お金がかかるという事は館の運営の基本的なことに関わることです。小屋は日々生きているわけです。これが、少しでも安全に少しでも使いやすく手直しもしたい。それにはしかるべき専門的な立場で、その優先順位をどうつけるかです。お互いが常にリレーションをよくするといいますか、理解しあうそういう努力が必要になる。それともう一つは正規の職員と委託派遣職員で構成されているのがほとんどです。