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私は例えば、安全対策に対していろいろお話する機会がありました。迫りの起動の時、絶対迫りが止まるまで、動くなと。これは、安全の為の基本なのです。

先日もこうしたことが起きました。迫りを起動する、いわゆる荷物を下からあげてくる、機材を積んであがってくる。それを手伝っていたアルバイトの男性が迫りが止まる寸前に、その積荷の上からおりたのです。この時、機材のひとつが転げ落ちました。それで、ちょうど舞台床と迫りの間に機材が挟まったが、緊急停止でかろうじて、框の部分を多少損傷したぐらいですみました。だから私が普段、安全に関しての初歩的な注意事項として指摘していること、幸いに人ではなかったが、現実には舞台の框が、ちょっと持ちあがった。後で、たたいて直せたからいいんですが、これがもっと大きければ完全に突き上げてしまいました。これはやはり初歩的な事ですが、迫りに乗っている時は、絶対に止まるまで動くなと口をすっぱくして言っております。

 

カウンターウエイト、綱元での危険性、今でもカウンターウエイトによる事故は数え切れないほどあるわけです。我々は、十分注意しているつもりです。

けれども、スタッフの中にはおろそかにする方がいる。つまり極端な例ですが、カウンターウエイトの溝に合わない積み方をする。それが原因で、何かのショックがあるとレールから外れてしまう。初歩的な事を守ることが大事です。やはり互い違いに組んでいくことぐらいは、丁寧にやるべきことだとおもいます。しかも、管理する側はこういう事を指摘、指導をする責任があります。そういった意味ではますます会館で働く方達の責任は大きくなってくるだろうと思うわけです。今の会館は貸し劇場方式で運営されている場合が多い。そうすると日替わりで舞台を使うメンバーが変わるわけです。そういう方達に、会館の状況、舞台の状況を働く方達に理解した上で使っていただく。この努力がなされないと、やはり事故はおこりやすい。それを知っていても事故というものはおきるわけです。

最近も劇場で転落死事故が起きました。中で一緒に働いている人達は舞台のことを知らないわけではない、十分に知っている人にもこういう事故がおこる。ましてや、外部から来て、一日小屋を借りて夜の公演がおわったらバラして退去する。日替わりのメンバーが入ってきた時に、この小屋はどうだろうという気持ちは全くないわけです。

それに対して、ここにはこれがある、場合によっては演出によってはスライドを開けますよ、あるいは吊り物をこういうふうに降ろしますよ、ということがきちんと伝達されていない。そういう事が大事にされないまま動かすから事故がおきるのだということです。

舞台機構で迫りをもっているところ、これは単に荷物を上げ下げするだけでなく演出上必要と思われれば、道具を飾って人を乗せて昇降します。ただし、無条件では使わせません。必ず条件として、監視要員をおかせます。そういう演出効果を狙うために、舞台機構をフルに使うということになった場合は、それに対する安全対策をどうとっているか。

 

 

 

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