日本財団 図書館


4)【安全操作の基本】

 

私なりに基本的に今までの体験から整理したことを申しますと、安全操作の基本というところで、多重安全機能という考え方があります。これは、航空機の設計などには、こういう発想が要求されるわけです。飛行機というのは、ひとつのことで故障が起きた場合、それをどうやって補うか、さらにそれが駄目だった場合、もうひとつの方法がとれるかとれないか。安全を幾重にもキープする、そういう発想があるわけです。舞台の上もそういう構想が必要です。事故がおきたら、それにすばやく対応しなくてはならないわけです。それができないと、その公演は、やめざるをえないことになる。これはあまりにもリスクが大きいわけです。

私も長い間舞台の仕事に携わってきて、本番中に迫りがとまったということを何回か経験してきています。その時にどう対応ができたか、機械である以上事故が起きる。つまり、故障が起き不具合の可能性は十分あるわけです。

ことに、マグネットスイッチ等は、しょっちゅう作動させているわけですから、カーボンがたまり接点不良をおこしやすいのです。単純なことですが、こういうことで迫りが止まるということはざらにあるのです。そうなった時、すばやく交換できる体制にしておけば、ある程度すばやく回復できるわけです。それを全部ダブルにして、あるいはトリプルにして対応策というのは非常に経費がかかって賛沢になりとても実現不可能ですけれど、まず、日常おこりやすいところで手当てができるところは、二重三重の対策をとっておく、あるいは情報通信にしてもそうです。舞台というものは同時進行なのです。通信回線でみんなきっかけのやりとりをする。その一ヶ所がきれた時に、それに変わるべき通信手段があるかどうか、通常は劇場の機構というのは、インカムで各オペレーターの部屋と部屋をつないでいます。舞台袖には、舞台監督からキュウをだす、インカムで調光室なりミキサー室に指令をだす。そういうふうにして、同時に動いているわけです。あるいは操作盤にキュウをだす。そうするとその回路がやられた時、即座に他の方法で、そのきっかけをとれるか、とれないか。あるいは、内線電話で緊急に連絡方法を変える。内線電話の場合インカムより時間がかかるでも、それはやむをえない。ただ電話の場合は他からの通信でふさがっている場合がある。そうするとどうするか、別にトランシーバを持っておく。つまり、二重三重の手当てというのはそういう発想なのです。これがだめなら、次の手段、それによって、少しでも現状復帰を早くする。こういうことが疎外されますと、情報連絡の欠落というのが一番こわいのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION