又、地域文化振興ということからして、最近の傾向として、その小屋を基点として、自分達でものをつくるという発想がめばえてきている。そうすると自分達のところで、常時、それだけのスタッフをかかえているわけではないが、外部に委託するにしても自分達が、制作の責任をとるという形の公演が若干でてきた。あるいは、よそのカンパニーにある程度補助金をだしてつくってもらう、会場を提供する。こういったことで、共催方式でやる場合もある。唯、現状はどうであるかというとホール側は別に主催権をもたない、会場を提供する貸し劇場方式が現状ではまだこの形態が多いと思います。こういった形態の違いによって責任の所在も違ってくれば、イニシアチブのとりかたもちがってくる。これをどこからどうやって線を引くか、これも非常に難しい問題です。ただあくまでも私は、この劇場ホールというものは、そこを中心にして文化を発信する基地でなければならないと考えています。
2)【技術的判断基準】
私が判断の基準にするのは劇場・ホールは創造の場、あくまでここでものをつくって生み出して観客に訴えていく、これの創造の場所である以上は原則不可能ではいけない。原則あくまでも可能。なにをやってもいいわけではないが、原則可能が基本です。なおかつ、それをやるためにはその裏に安全対策がきちんととられているか、よく考えて、しかも安全対策がきちんととられているかぎりにおいては、表現はできるだけ選択幅を大きく、いわゆる豊かな演出力それが実現出来るようにしなければなりません。
劇場の施設を使うわけですから、管理するのは劇場側です。ですが、あくまでも、もの作りに参加しているという意識がないといけないと思うわけです。ただ、責任の範囲は違うが、基本的にものをつくるということに施設そのものが参加しているという意識がない限りは、建物だけあればいいんだという考え方は生きた施設にはならないと考えます。
3)【舞台機構と機能の把握】
劇場機構をいかに安全に使うかということはまず、それは劇場の機構の内容をある程度把握してないといけない。この部分においてはやはり専門家が必要になります。但しその専門家が、劇場の数に比例して非常に不足しています。専門職というのは一朝一夕に育つわけではありません。
やはり長い時間、その間の経験が必要になる。今盛んに人材育成の問題を各方面で取り上げていますが、私は、やはり時間をかけて、最初から長期の計画を立ててやらなければいつまでたってもこの状態解決されません。それはそれとして劇場の機構は基本として把握していなければ、やはり適確な運営はできません。
今までのいろいろな事故例を調べてみますと、やはり基本的には人災、しかもそれは難しい事を要求されてやるということではなくて、単純なところでのミスが大きな事故になっているのがほとんどです。その一番基本的な事を本当に守られているかどうか私もいろんな事故を体験していますが、本当に我々が普段、舞台上でやってはいけない常識が、今的確に守られていない。そのために、ほんのちょっとしたすきに、事故はおこるのです。そういった事を守ってもらうためには、きちんと反芻しながら基本的なことが守られているか守られていないか、そのへんを管理運営する側としては、常に目を光らせていないといけないと思います。