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しかし実際には暗騒音のために、60dB減衰するまで測定できないことが多いため、−30dB位までの傾斜を調べ、−60dBまで減衰する時間を予測して残響時間を求める。残響時間は、部屋の使用目的やその中で取り扱う音の種類、部屋の大きさや形状などによって、それぞれ適する値がある。これを最適残響時間という。最適残響時間は、たとえばクラシックでもロマン派の音楽では、2.2秒、バロック音楽では1.5秒が良いなどどいわれているが、残響時間は部屋の容積が大きくなれば長くなるので、一概に音楽によって最適値を決めることできない。ここでは、参考に何人かの研究者が推奨する室容積と仕様目的別の最適残響時間を図に示す。なお、図に示される残響時間は500Hzの値である。

図/参照P.9

 

直接音と間接音が分離して聞こえてしまう現象をエコーまたは反響といい、会話などを聴く場合は、明瞭度が低下してしまう。これを音響障害という。このような現象は、耳に到達する直接音と反射音との時間差が50mS(1/20秒)以上になると起こるとされているが、レベルや他の反射音も影響するので時間差からだけでは、エコーになるかどうかは判定できない。しかし、直接音と反射音の経路の差が17m(メートル)以上になると到達時間差が50mS以上となり、音響障害となるエコーの発生が予測されるので、建築音響設計や、SR用のスピーカを2箇所以上に配置する際には音の経路差の検討が必要となる。

室内で音を聞いたとき、低音域が必要以上に響き、不快な感じになることがある。この状態をブーミング<booming>という。ブーミングの主な原因は、低音域の残響時間が長く、低音が減衰せずに残り、多くの定在波が発声していることなどである。そこで、定在波<standing wave>とは、スタジオやリスニング・ルーム等で、互いに平行な壁面があると、その間を往復する音によって共振が起こる。このような音波を定在波と呼ぶ。定在波が生じる部屋では、音圧が高くなる場所と低くなる場所が存在してしまう。特に波長の長い低音域では問題となり、ブーミングの原因となる。

ライブ<live>とは、室内の音響状態を表す言葉で、響きが多い場合をいう。逆に、響きが少ない場合を「デッド<dead>」という。残響時間の短い場合の表現として使われる。デッドな場合は、音が明瞭に聞こえるが、音の豊かさに欠ける。また反射板を設営してコンサートホールの音響特性を得られたとしても、外部からの雑音の侵入を防止することは、反射板を使用する前に大事なことであろう。部屋の壁、間仕切り、扉などで音の伝わるのをさえぎることを遮音(しゃおん)<acoustic isolation> ; という。遮音の効果を遮音度といい、室内の音圧レベルと外部の音圧レベルとの差で表す。NC曲線<noise criteria curves>という、いろいろの騒音のどの帯域が耳につくかを考慮して、これを補正した騒音の許容基準曲線の定義もある。これを基準にして、外部からの騒音を遮断するための壁構造を決めたり、騒音処理をするために空調の設計をする。録音スタジオでは、NC15〜20、ホールでは、NC20〜25、会議室やホテルでは、NC25〜30以下であることが望ましい。

 

 

 

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