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音響反射板時のマイクセッティングについて

 

[まえがき]

音響反射板で講演会を催すのは、音響技術員にとって、難しい仕事の一つでである。反射板設営時には残響時間が長いため、マイクの音声が聞き取りにくい、明瞭でない、音が何重にも聞こえる、はね返ってくる、喋りにくいなどの現象が良く見受けられる。これを解消するための具体的なセッティングについて理論学習と実践を行う。

 

1. 音響反射板、反射音について

音響反射板とは、プロセニアム形式の劇場で室内楽やオーケストラを演奏するとき、コンサートホールの音響条件に近づけるために設置する舞台機構のこと。舞台の背面、側面、天井を囲って、演奏する位置と観客席を同一空間の状態にして、コンサートホールの音響特性になるよう音響補正をするためのもので、組み立て解体する形式のものと、移動して格納する形式のものがある。反響板ともいうが、これは多目的に使用される劇場でクラシックなどのコンサートを行うとき、残響特性を補正するために用いる音響反射板のことをいう。一般的に、背面、天井面、側壁面に設置してコンサート・ホールの音響条件に近づける事を目的としている。

そこで、反射の定義だが、反射音<reflect sound>とは、壁や天井、床などで反射された音のことで、間接音ともいう。音源から直接、受音点(耳やマイクロフォン)に到達する音は直接音といい、反射音は直接音よりも遅れて到達する。また、反射が繰り返されると残響となる。そして、残響(リバーブ)<reverberation>だが、部屋の中で手をたたいたり、楽器やスピーカーの音を急に止めたりすると、しばらくの間はその音の響きが残っている。これを部屋の残響という。これは音波が部屋の壁、天井、床などで反射を何回も繰り返し、音を止めても音のエネルギーが残っているために生ずる。残響の多い部屋では明瞭度が落ちるが、音量が豊かになり、音楽の表現力を増すこともある。いわゆる余韻が残る現象で、反響と違って劇場にはある程度必要なものである。それから最後に、反響とは、山彦のように、反射体が遠くにある時に、発音体の直接の音と反射音が2つ別々に聞こえる現象である。劇場では反射体まで10cm以上の場合に反響が起こることがある。また劇場では反響があるのは建物の欠点である。また、おなじ意味で、エコー<echo>という現象があるが、山びこはエコーの代表的な例である。音を反射する壁の多い部屋で音を出すと、音がだぶって聞こえる。50ミリ秒以上遅れて、壁などで反射してくる反射音は、音源から直接とどく直接音と分離して聞こえる。これをエコーと呼ぶ。一般的にはリバーブ(残響)とエコー(山びこ)を混同しているが、音響学上は区別して用いている。よって個人的見解ではあるが、音響学上では、反響板の名前は、残響板と呼ぶ方が適切かもしれない。

音がよく拡散し、十分に混ざり合えるような部屋は、拡散音場と定義される。このような部屋で、音源から出た音が十分に部屋中に行き渡った後に、音を急に停止すると音圧レベル(dB SPL)は、直線的に減衰する。この音が減衰して百万分の1になるまでの時間、つまり60dB減衰するまでの時間と定義され、響きの量を数値で表すものとして広く使用されている。

 

 

 

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