調光器のお話に入ります。私がこの業界に入りましたのは昭和47年です。ちょうど名古屋市民会館が開設した年でした、その当時の市民会館の調光卓はSCRの150本、6段プリセットという非常にその当時の画期的なものでした。その当時は、オートトランスが全盛の頃でして、オートトランスからSCRへの移行期にちょうど仕事を始めましたので、オートトランスとSCRを体験しながらの仕事でしたので、これからの調光器がどのような方向へということをお話したいと思います。オートトランスを現在も使用しているホールが大垣市民会館さん位と思いますが、愛知三重岐阜、三県で1館だけだと思います。先日も東京からの仕事の依頼が入りましたが、大垣市民会館の場合、現地の依頼はオートトランスが分かる技術者を入れて下さいと、そのような依頼がありました。
大垣市民会館のオートトランスはチャンネルが8本横並びになっていまして、4列の段になっています、4×8の32のチャンネルというシステムです。ヴォルテージ制御をしています。ヴォルテージでスポットを制御するという機構です。チャンネル1本のストロークの長さが30〜40cmぐらいで、幅が3cmほどですから、4×6尺ほどの縦置きぐらいの大きさになります。SCRが出てきた、トランジスターを使ったSCRですが、スペース上で省力化できたということです。初めの頃のSCRのフェーダーの大きさと現在のフェーダーとそんなに変わりません。27年ぐらい前に開発され出てきましたSCRが一気に色々なパターンで広がりました。大垣市民会館の32本程度のオートトランスでも一人で操作するという事は少なかったと思います。内容によって異なりますが、2〜3人位で調光室での操作をしたのですが、かなり大きな劇場でも60本ぐらいが限度だと思います。スペースがさらに広がっていく訳ですから、調光器のスペースからいっても、一番大きな劇場で60本位だったと思いますが、60本のオートトランスを操作するのに3〜4人の人間が操作していました。その当時、その操作の中で色んな微妙な事を行っていました。その当時一番よく言われた事をやってみます。
舞台を暗転します、これはSCRの普通のフェードアウトです。ローホリを少し残しぎみにF.Oします。次にローホリを少し先行しながらF.Iします。私共が初めて調光室に入ってオペレーションする時、先輩から言われたことは、後ろから点けて後ろから消せということです。もう一度暗転しましよう、F.Iしましょう。こういう状態です、つまり、一度人間がシルエットに成りながら見えてくる。消す時も一度シルエットに持っていきながら消えしていく。そのような事で微妙なオペレーション技術を学んだ記憶があります。3人、4人で操作をしていますので、全体をモータークラッチを掛けてモーター制御で暗転をする場合でもローホリを残しているんです、全体の明かりを見ながら、必要な明かりを遅らしていく。同じようにブルー舞台からナマ舞台に変わる時にも何かを先行するという事を考えます。そこにいる役者に一番関係する明かりを先行して明かりをチェンジするとか、いろいろ考えながらオペレートしました。これがSCRになった時にプリセット出来ますので、その変化がSCRの中では出来にくかったです。ですので、オートトランスからSCRに変わった時は省力化できました。事前にプリセット出来ますから再現性が高くなります。何度も確認が出来ますからトラブルが少なくなりましたが、オートトランスの時に一番やられたテクニックが活きなくなりました。そんな中でも、我々は頑固にSCRを使いながらもオートトランスのテクニックをしていたんですが、今なかなかプリセットとプリセットをチェンジする、クロスするというオペレーション操作の技術しか残っていないのが現状です。