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密室化されて、16世紀の最初は、シェイクスピアのグローブ座などは半野外なんですが、すぐにヨーロッパの劇場も密室化しますし、江戸の歌舞伎劇場も最初から密室です。

密室の中でどのように照明を取っていたのか?日本の場合、歌舞伎の劇場ですと外光を取っていました。外光がメインでそれに蝋燭の光を使って採光していました。

ヨーロッパの劇場ですと完全に窓を締め切って、蝋燭を使って採光していました。例えば、この辺りのヨーロッパの劇場がどのように蝋燭を使っていたのかという資料は『アマデウス』という映画、モーツアルトとサリエリの確執を描いた戯曲ですが、この映画を観ますと、模擬スタイルですが、どんな風だったのかが分ります。フットライトのように舞台ばなに蝋燭がずっと並んでいます、舞台の横も蝋燭が並んでいます。当然客席の照明も必要ですから、頭上には何本かの蝋燭が使われたシャンデリアが吊られています。で、面白いことにパフォーマンスが終わるとシャンデリアが降りてきます。降りてくることによって客席が明るくなるというような演出が行なわれた事が映画を観ていますと分かります。非常に短い、高だか百年程度の電気照明の歴史の中で、ドンドン技術革新がされています。

次に劇場の照明機構の話をいたします。一般的に日本の劇場のスタイルですが、このホールは特殊な状況に有りますね。この奥の舞台は設置されています、前面が2面迫上がっていますが、迫りを下げて、まったくフラットなスペースの状態で使用出来る設計になっています。多目的に使うために、皆さんが運営されている劇場とはやや違うと思いますが、大体の設備が有りますのでご説明します。

まず、客席側から舞台を照らす、前明かりと呼んでいるフロントサイドスポット、客席の横の壁面から舞台を照らす明かりです。このフロントサイドはかなり日本固有のものです、ヨーロッパの幾つかの劇場、或いは日本を出て、他の国の劇場に行きますとフロントサイドが無い劇場が沢山有ります。壁面のギャラリーのような所に鉄管などを仮設してスポットを吊り込むという劇場も有ります。日本の演劇スタイルと、向こうの劇場の発展してきたスタイルが違います。ヨーロッパの劇場の大きな発展は19世紀のオペラの発展がドンドン進む流れの中で劇場が発展してきました。日本のように歌舞伎、古典がメインになった劇場との差が有ります。そういった意味で、歌舞伎には無くてはならないフラットな照明が必要とされましたので、必ず明かりが前に必要とされ、日本の劇場の中でフロントサイドが発展してきました。この20年ほど皆さんのホールもそうですが、巨大化してきました。フロントサイド室が大きくなって、客席に出ぱってくるという状態がでできました。この数年ですが、かなりの建築家が、日本の出すぎたフロントが見栄えが悪いという事で、なるべく引っ込める努力をして劇場を作るようにしています。この事は我々技術者にとってはかなりの問題でして。今までは部屋だったんです、壁で張り出してきた部屋だったんですが、部屋を少なくして、照明機構だけ増やしていこうという事は、鉄骨スタイルになるんです。今、フロント作業をするのに危険を伴う仕事が、この数年目立っています。

 

 

 

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