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これからその町が現在の日本で、ソフトの時代に対応して活性化していくかという時に、演劇をはじめとする芸術文化というのは、きっと価値があることだと思うのですけれども、その時にその施設がどういうような役割で、その町に登場していったらいいのかということなのです。その時に町民・市民が自由に使える会館としての役割というのが、もちろんさっき言ったとおり市民ギャラリー的な役割があるのですが、もう一つの役割がというのがあるのだと思うんです。それはその町でどういうふうに演劇や芸術文化を住民にサービスをしていったらいいのかという、政策をもってやることだったと思うのです。

最後に、非常に具体的なことなのですけれども、町の文化施設が演劇公演をやる時に町の予算があるから、非常に安く公演をしたり、ただで公演をしたりすることがあるのです。それは、とても困ります。北海道はいわゆる明治から百数十年間経ってこうなっていますが、例えばサッポロビールなんかも最初は国立のビール工場でした。ほとんどの北海道産業というのは、国産でできたと思うのです。それがだんだん一定の基盤ができた時に、民間に委託していきまして、払い下げていってサッポロビールになったりしています。演劇公演もそうなんだと思う。税金を使って自分たちの町が主催したり、会館が主催するときだけ、補修が出るから非常に安くするということをやっていると、競争できなくなっちゃう、民間の方が。片方で1,000円で、片方は民間でやった方は3,000円とか5,000円でやらないといけない。今、北海道演劇財団は来月「三人姉妹」というお芝居の公演をする。札幌は、6,000円なんですよ、入場料が。北広島は3,000円なのです、実は。これは2倍も違うので、すごい困ってるんですけど。北広島はほとんど満員にはなりそうな感じなのですけれど、札幌の方はそうなってないです。全ての産業を公共施設、つまり行政セクターがやれませんよね、ビール会社と同じで。芸術文化や演劇というのはお客さんの入場料だけでペイするというジャンルではないと思うのです。だから補助があるのはいいのですけれども、それが会館が主催する時だけ非常に安くて、そうじゃない時高いというのは、その街の総合的な民間の活力を育成していくことにならないと思うのです。僕らはいろんな会館に私どもの芝居を提供してやってもらっているので、それはありがたいことですけれども、長い目でみるとそういう時だけ安くて、そうじゃない時に高いというのはどんなんだろうとやっぱり思うのです。例えばさっきの美術館の学芸員のような人たちがよしとすれば、そういう民間のところにも同じように補助していくというふうにしていかないとその街も全体的な民間の力を含めたポテンシャルが上がっていかないように思うのですね。美術館の学芸員に相当するようなそういう人たちがやっぱり会館の中にいないといけないと思うんです。今日は、技術者の研修会ということなんだと思いますが、さっきからいわれてるように日本の行政の中では人事異動しますから、皆さんいつ立場が変わるか分からないと思うんです。そういう学芸員に相当するような人をとりあえず、ぼくらは今アートマネージャーと呼んでますけど、アートマネジメントをする人です。アートマネージメントをするアートマネージャーというような人がホールの中にいて、その町における演劇制作でありますとか、それからホールにおけるそういう美術館と市民ギャラリーに相当するようなふたつの役割のことですとか、それから民間や公立施設を含めて、総合的にその町のなかでそういう芸術を活性化させていくかというようなこと、そういうことを考える人、そういうアートマネージャーのような人が、専門職として会館の中に出来るといいなと思っております。

 

 

 

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