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まず一つ目です。演劇に対する又は芸術文化に対するその町の政策というのがないように思うので、その政策をつくって欲しいということです。日本の行政って、すごい優秀ですよね、外から言うのも変ですけれども。だから例えば公害が問題になった時は、10年位かかってそういうことを解決してきましたし、福祉の問題のときは、10年位かかってそういうことを解決してきたと思うのです。今、日本は、情報とか芸術とか科学とかそういうソフトのところが問題になってきました。それがある意味で世界の先端までいったと思うんです。

小さな町でも、そういうソフト的な構造をどう確立していくかというのがとても大事になっていると思うのです。その時に演劇はとても大事なことだと僕は思っているのですが、政策が総合的に無いように思うのです。例えば他のジャンルのことを考えると、非常によく分かるのです。例えば農業を考えてみますと、農業というのは最初に研究というものがあります。例えば大学で農学部があったり、農業試験場があったりします。きららみたいな米ができたりしました。そういう研究分野がありまして、それから次に基盤整備があります。それはソフトとハードと両方あります。例えば農業だったら土壊を改善したり、区画整理をしたり、いろんなことがあります。農協のようなそういう組織をつくって、バックアップするシステムを作るとか、そういうふうな基盤整備があると思うのです。最終的には、生産っていうものがあるわけでして、それは民間の農家がやっていると思います。このように総合的に政策をもって推し進められている。演劇や芸術については、そういうような政策がないまま、今は文化の時代だから、地方の時代だからということで、思いつくところを、皆んながやっているように思うのです。そうやって十数年経ってきましたから、各部分は、町によって様々なのですけれども、非常に進み出したのですが、僕らの立場から望むところは、本当に総合的な文化政策があった上で、やってもらえれば良いなと本当に思うんです。それが一つ目です。

それからもう一つは、公立文化施設の方が、今日はいらっしゃるわけですが、公立文化施設には、二つの側面があると思うのです。美術館を考えると、非常に良く分かるのですが、札幌のような大きな都市ですと、道立美術館みたいな大きな美術館と、市民ギャラリーがあります。分かれてます施設が。美術館は、市民がそこを借りることは一応できないです。申し込みは出来るのですけれども、申し込んだから平等に借りるっていうことではないのです。そこには学芸員という人がいて、この美術展をやることが、住民にとってプラスになるかどうかということを、芸術的に判断するわけです。芸術的に価値があることを、そこで事業としてやっていくのが美術館です。市民ギャラリーというのは、誰でも住民が「自分が絵を描いたから、発表したい」と言うことであれば、平等に借りられるのです。

ところが演劇ですと、最近日本でもいくつかはそういう分離が始まったのですが、劇場と会館というものがあるわけです。劇場というのは美術館に相当するもので、つまりそこの町の住民に演劇的に価値のあるものを提供する、サービスするための例えば学芸員的な人がいて、その人が判断をして、価値のあるものを公演するのが劇場です。それから、町民会館、市民会館っていうのは、そうじゃなくて市民ギャラリーに相当するものでして、そこの住民が「なんか自分の文化活動を発表したい」そういう場所として会館があるのだと思います。

大都市ではその役割が、施設によって分かれていきつつあるのですが、大都市でない町は、それが一つの公立文化施設の中に両側面としてあるわけです。この両側面があるということを認識してもらいたいというのが、僕の二つ目の希望です。

 

 

 

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